バーバリーの「後釜ブランド」は化けるか

20150317-00063310-toyo-000-2-view「コートのトップブランドの地位は譲らない」。

 3月16日に開催した「マッキントッシュ ロンドン展示会」。その場で、三陽商会の佐久間睦取締役は、気合いを込めて語った。

乗馬用で上流階級に浸透したゴム引きコート

2015年6月、三陽商会は1970年から約半世紀に渡って保持してきた英国バーバリーブランドの製造・販売ライセンスを失う。三陽商会の屋台骨を支えてきた主力ブランドの消失――。三陽商会の存続すら揺るがしかねない危機を乗り越えるべく同社が出した答えは、新ブランド「マッキントッシュ ロンドン」をバーバリーの後釜として位置づけ、同社の主力ブランドとして育成するというものだった。

 だが、国内におけるバーバリーの知名度は圧倒的だ。ある百貨店関係者は、「トレンチコートは同社を象徴する商品で、高級重衣料で圧倒的な存在」とバーバリーを評す。

 一方のマッキントッシュは、チャールズ・マッキントッシュが発明した世界初の防水布を使用したゴム引きコートを1823年に生み出す。その後、ゴム引きコートは英国の上流階級の人々の間で乗馬コートとして人気を博し、英国の高級アウターウェアブランドとして認知されるようになった。だが、バーバリーに比べて知名度、売り上げ規模で劣る。

三陽商会が今回新たに立ち上げる「マッキントッシュ ロンドン」は、世界展開されているマッキントッシュを、日本市場に特化させたオリジナルブランドだ。

 バーバリーの売り上げ消失を補完するには、しばらく苦戦が想定されるが、マッキントッシュならではの利点もある。バーバリーの商品展開に比べて、三陽商会の方針がより尊重され、デザインや広告宣伝の自由度が増すことだ。

 バーバリーとの契約では、細かいことまで英国本社の許認可を得る必要があった。しかし、マッキントッシュ社は2007年に日本のアパレル商社である八木通商(大阪市)が子会社化。「八木通商は日本の市場を知り尽くしているので意思疎通がしやすく、許認可を得るというより、協力して新ブランドを育てていくという関係」(三陽商会広報)という。

衣料以外に雑貨も展開へ

これにより可能になるのが、商品アイテムの拡充だ。バーバリーでは、三陽商会は衣料しか手掛けることができなかったが、マッキントッシュでは靴やかばん、財布などといった雑貨も展開することが可能になる。

 業界関係者の間では、「バーバリーが日本で成功したのは三陽商会の力が大きかった」という声もある。英国本社に手足を縛られながらも、日本人向けに商品を企画してきた三陽商会の実力は高く評価されている。今後、自由度が増せば、より力を発揮しやすくなるだろう。

 想定するターゲットは、「伝統と歴史に裏付けされた本物を知る大人たち」「45才以上の男女」とアッパー層を意識しているが、価格帯に関しては広めに取っている。たとえばメンズコートでは、下は6万3000円から、上は50万円まで。メンズスーツは11万円から20万円となっている。これを見る限り、百貨店の1階で展開されているような高級ラグジュアリーブランドと、その1ランク下である中高級プレミアムブランドを包有しているといえよう。

商品コンセプトと概要は固まったが、これからはオペレーション面で高いハードルが待ち構えている。

 「新ブランドを7月下旬から9月上旬にかけ、7週間で一気に約260店立ち上げる。おそらく、これは世界で前例のないギネス級の大仕事になる」と佐久間取締役が語ったように、三陽商会にとって未知の経験には不安も伴う。

売り場設営で30億円の特損を計画

三陽商会は国内に約350のバーバリー売り場を保有しており、そのうちの約7割を「マッキントッシュ ロンドン」の売り場として確保することに成功した。だが1日当たり約5店というハイペースでの切り替えは現場に負担を強いることになるだろう。時間をかければ現場の負担は減るが、切り替えが遅れるほど販売の機会損失が膨らんでいくというジレンマが生じる。

 新ブランド立ち上げには先行投資もかかる。売り場施工などで30億円を想定しており、これを特損計上するため、今2015年12月期の純利益は前期比98.4%減の1億円とゼロ圏に沈む公算だ。

 試練が待ち構える三陽商会だが、これまでのバーバリー頼みから、自由を得て、より実力が反映されやすい状況になったともいえる。危機を飛躍へ繋げることができるか、同社の真価が問われている。