トヨタが27兆円の金融資産を抱えている理由
世界トップクラスの自動車メーカーであるトヨタ自動車。今月で期末を迎える今年度(2015年3月期)決算は2兆1300億円(前年度比16%増)という巨額の純利益を見込む。日本企業が稼ぐ利益額としては最も大きく、名実ともに日本一の企業である。業績好調を受けて3月17日には、株価が8年ぶりの過去最高値を付けた。そんなトヨタには自動車メーカーとは、「別の顔」がある。トヨタという会社を構成する資産を分解してみると、工場の土地や機械設備、自動車の販売在庫といった目に見えるものよりも、金融資産の占める割合がかなり大きいということだ。総資産のうちざっと約3分の2にも及ぶ。つまり、トヨタは自動車会社でありながら巨額の金融資産を持つ金融会社でもある。それはなぜなのか。
前年度(2014年3月期)末で見ると、トヨタの金融資産は約27兆7900億円だ。会計上の区分で見ると、受取手形・売掛金、金融債権(短期・長期)、有価証券、関連会社に対する投資などが対象となる。
そのうち、金融資産の約半分となる13兆7300億円程度が金融債権である。金融債権とは消費者への割賦金融(自動車ローン)、リースやディーラー(自動車販売会社)への貸付金であり、顧客またはディーラーに対して金融商品を提供しようとする会社の経営方針が伺える。また車の購入時にローンを組む消費者も多いであろう。ローンを組む際に、どの会社を選択するかは実は購入者の自由である。
自動車の売買とローンは別契約だが…
トヨタ系の販社と自動車ローンを提供するトヨタファイナンスは別会社。ローン契約も自動車売買契約とは別になされる。購入者はトヨタ系販社が勧める提携ローンではなく、別の金融会社とローンを組んでも構わない。ただ、実際のところは提携ローンを選択する例が多い。さらに注目すべきなのはトヨタが、他の代表的な自動車メーカーと比べても、総資産に占める金融資産の割合が高いことだ。日産自動車、ホンダと比較してみよう。同じ時期ならホンダが57%、日産にいたっては46%である。
これを解くヒントの一つは、有価証券報告書に記載されている。
「トヨタは、顧客に対して資金を提供する能力は、顧客に対しての重要な付加価値サービスであると考え、金融子会社のネットワークを各国へ展開しています」
「顧客への重要な付加価値サービス」だという趣旨は、2005年3月期の有価証券報告書から多少の文言の違いはあれ、2014年3月期まで一貫して記載がある。一方、ホンダと日産の有価証券報告書には、これらに類似や該当する記載がない。
もちろんホンダと日産が顧客に対する金融サービスの提供を軽視していることはないであろう。その証拠にホンダも日産も総資産の約半分が金融資産である。しかしトヨタのように10年間一貫して、資金を提供する能力が重要な付加価値サービスと有価証券報告書に記載し続けることに、トヨタの金融事業にかける意気込みがあると見て取れるのだ。
自動車販売と金融商品は相性がいい。自動車を現金で一括購入する人は決して多くはない。個人ならローンを組んで買ったり、法人が購入者ならリース契約をする例も少なくない。この時には、自動車ローンやリースの他に自動車保険の提案もできる。トヨタにはクレジットカード事業もある。つまり、トヨタ系販社が自動車の販売をきっかけとして、さまざまな金融商品の販売や提案につなげる。そのためにトヨタは金融資産をたくさん持っている側面がある。
金融事業の営業利益率は10年で倍増
トヨタの金融事業は収益性も高い。自動車事業と金融事業の売上高営業利益率を見てみよう。2014年3月期では、自動車事業が8.8%に対し、金融事業は20.6%と高い。これが10年前の2002年3月期では、自動車事業が7.4%、金融事業は9.9%だった。金融事業の収益性が上がったのには2つの理由が考えられる。一つはトヨタ自身の資金調達コストが低いこと。ムーディーズなどの格付会社の格付もほぼ日本国債と同様の評価である。資金調達コストが低く、いわばお金を安く仕入れることにより、金利競争でも優位に立っていると考えられる。
もう一つは営業努力であろう。金融事業の営業利益は2002年3月期は686億円にすぎなかったが、2014年3月期には2948億円と約4.3倍にまで拡大した。一方の自動車事業は、1兆0845億円から1兆9387億円と約1.8倍に広がったが、金融事業ほどの伸びではない。
ただ、資産運用効率でいえば、自動車事業の方が圧倒的に優れている。代表的な指標である売上高を総資本(総資産)で割って求める「総資本回転率」を見てみよう。自動車事業では、1.04回に対し、金融事業は0.07回。つまり、圧倒的に資産を効率的に運用しているといえる。それでもトヨタが金融事業に注力する背景には、自動車事業における激しい国際競争がありそうだ。自動車販売を通じて周辺サービスに力を入れることで、利益を稼ごうという方針なのかもしれない。






