コメ離れでもヒットする“新感覚ふりかけ”とは? 具材がコーンだけ、ポン酢風味!?
農林水産省のデータによると、米の1人当たり消費量は長期的に減少傾向。ピークだった1962年度と比較すると、最近はその半分近くまでになっているという。そんななか、活況を呈しているのが、“ごはんの友”の代表格であるふりかけだ。ソフトタイプなど新しいスタイルのふりかけが次々に登場し、ヒット商品も毎年のように生まれている。その一つが、丸美屋食品工業が2014年8月5日から発売している「こだわり食感」で、目標としていた量の4倍以上売れているという。
ふりかけの購入者層にも変化の兆しがある。従来、ふりかけは子供が食べるもの、というイメージが強かったが、永谷園が2013年から販売している「調味料ふりかけシリーズ」(「七味ふりかけ」「山椒ふりかけ」「ぽん酢ふりかけ」「ゆず胡椒ふりかけ」)は、50代以上に特によく売れているという。また「ふりかけは子供のために買っていく人が中心だったが、調味料シリーズは、『自分が食べたいから買っている』という人が多い。しかも20点まとめ買いするなど、これまでと違う買われ方をしている」(永谷園 研究・開発本部 小澤健氏)。
さらにふりかけといえば、さまざまな素材の調和を味わうものだったが、そこにも異変が起きている。ミツカンが2015年1月21日に発売した「ふりかけやさい Richコーン」「ふりかけやさい Rich枝豆」で使われている素材は、味付け野菜がそれぞれ1種類のみ。
今いったい、ふりかけにどんな変化が起きているのか。またなぜ、米離れが続くなか、ふりかけが売れ続けているのか。
●発想の転換!? 調味料の味がふりかけに
お茶漬けのイメージが強い永谷園だが、「おとなのふりかけ」「超ふりかけ」など、新タイプのふりかけ商品を出し、大ヒットさせている。最近のヒットである超ふりかけは新技術を駆使して、素材の本格的な味わいとサクサク感を追求した商品だという。
しかし新技術は、そう次から次へとできるものではない。従来の技術で製造でき、かつ新鮮味のあるふりかけを作るには、別のアプローチが必要。調味料ふりかけシリーズは、「当初はほかの味付けをいくつか考えていたが、試食した人たちから、七味唐辛子の評価が非常に高かった。そこで、従来の定番のふりかけに、七味唐辛子をプラスしたシリーズ3品を発売した」(小澤氏)。
2013年2月25日から発売した七味唐辛子ふりかけ3品が非常に好調だったため、同年8月5日より「ゆず胡椒ふりかけ」、翌2014年2月17日に「山椒ふりかけ」、8月2日には「ぽん酢ふりかけ」を発売した。
ユズコショウもサンショウも好きな人は多いが、鍋やウナギ以外にはあまり使い道がない。ふりかけにすればその風味を毎日楽しめると考えた。またぽん酢ふりかけは「「夏場の食が進まないとき、梅やしそ風味以外でごはんがさっぱり食べられるふりかけを作りたかった」(小澤氏)といい、いずれも好調だ。調味料とふりかけの両方の特徴を併せ持っているため、冬は鍋の材料と同じ売り場に置いたところ、よく売れたそうだ。
●野菜がそのままふりかけになった!?
ふりかけの代名詞で看板商品の「のりたま」が2015年で発売55周年を迎える丸美屋。市場のシェア3割を占める同社では、リニューアルを含めて年に30種類程度のふりかけの新商品を発売しているという。「ふりかけを日常的に使っている人は複数を常備し、日ごとに変えてローテーションしている人が多い。だから常に新しい切り口を模索している」という。
ふりかけは大別して「ドライタイプ」「ソフトタイプ」「瓶入りのウェットタイプ」がある。最も販売数の多いドライタイプは、社内調査やユーザー調査では「おいしさ」「彩りの良さ」以外にも「ドライならではの食感の良さ」が高く評価された。また最近はどのふりかけも食感を重視する傾向があり、スナック菓子でも食感重視の商品が人気を集めていることから、ドライタイプならではの食感に特化した商品「こだわり食感シリーズ」を企画。従来のドライタイプにない食感を実現するため、開発に1年以上かかったという。
なかでも注目は「こだわり食感<ザクッ!野菜ふりかけ>」だ。野菜入りのふりかけは一般的にペーストやパウダーを薄いフレーク(シート)状に加工している。しかしフレークではザクッとした食感にならないため、そのままの形と色を残す「真空フライ」という方法で加工している。「野菜チップスなどとほぼ同じ加工法で、具を大きいまま入れられ、どんな野菜が入っているのかひと目で分かるのが、ほかの野菜ふりかけにはない大きな特徴」(丸美屋食品工業マーケティング部の金澤勇係長)。
また「こだわり食感<ふわっ!海苔かつおふりかけ>」は、のりとカツオ節というふりかけでは超定番の味。だが本枯れ節を極限まで薄く削った“削り花かつお”を使用し、のりもフワッとした口どけの一番摘みのりだけを使用。とろろ昆布を加えることで、さらにフワッとさせている。味付けが濃いと調味料の重量でフワッとならないので、味付けもシンプルにし、素材の味を生かしている。
「こだわり食感<パリッ!海老ひじきふりかけ>」は、ひじきが入っているのが最大の特徴。ひじきは乾燥した状態では固いが、フリーズドライにすることによって軟らかく、かつパリッとなる。逆に海老はフリーズドライではパリパリにならないので、別の加工をしている。素材によって、どう加工すればパリッとなるかが違うので、のり・昆布・わかめなどほかの素材も一つひとつ素材に合った加工をしているそうだ。
●ふりかけの大革命!? コーンだけ、枝豆だけふりかけ
「素材がブレンドされた総合的なおいしさが重要」という“ふりかけの常識”を一刀両断したといえる商品が、ミツカンの「ふりかけやさい Richコーン」「ふりかけやさい Rich枝豆」だ。いったいなぜ、1種類の野菜だけを使用した斬新なふりかけが誕生したのか。
同社でおむすびの素のユーザー調査を行ったところ、「安心」「高品質」といった普遍的な価値と同時に、「素材感」「健康感(野菜が摂れる)」「いろいろな使い方ができる」などの付加価値を持つ商品が高評価であることが分かったという。同社ではもともと素材感を重視した商品づくりやメニュー提案をしており、野菜をおいしくとれる食べ方の提案もしてきた。そこで野菜の素材感に特化し、かつ汎用性の高い商品であれば差異化できると考え、同商品を企画したという。枝豆とコーンを採用したのは、同社で行った好きな野菜ランキング調査で上位にランクインしていたためだ。
ふりかけやさい Richコーンはでんぷんを加えた調味液を染み込ませてフリーズドライにすることで、通常フリーズドライで起こる素材中の水分が抜けた部分(空洞)を埋め、ほどよい食べ応え・食感を実現した。ふりかけやさい Rich枝豆はパーム油を染み込ませてフリーズドライにすることで、揚げずにカリッとした食感に仕上げている。食塩、甘み、うまみを最小限にし、枝豆本来の甘みである麦芽糖を使用し、素材の味わいを生かしたシンプルな味わいに仕上げたという。
「素材のおいしさをそのまま生かしたふりかけ。シンプルな味付けで、乾燥することにより本来のうまみを凝縮しているので、ごはんにそのままかけるだけでなく、いろいろな料理に使える」(ミツカンMD企画部の前田哲也氏)。例えば、ふりかけやさい Richコーンはごはんにそのままかけるだけでなくチャーハン、ラーメン、サラダのトッピング、ちらし寿司、スープなどいろいろな料理に使える。ふりかけやさい Rich枝豆は混ぜご飯、和風パスタ、ポテトサラダ、ちらし寿司、玉子焼きなどに使えるとのこと。ターゲットはふりかけを購入する際に素材感や品質感を重視する40代以上だそうだ。
●“シニアふりかけ族”が新トレンドを作る!?
それにしてもなぜ米離れが進むなか、これだけふりかけ市場が活況を呈しているのか。丸美屋の吉田課長は、次々に新商品が出ているのに、どれもそれなりに売れているのは、ふりかけユーザーはいくつもの商品をキープし、その日の気分で選んでいるからではないかという。「こだわり食感シリーズが売れていても、ほかのふりかけ商品の売り上げは変わっていない。乗り換えるというより、選択肢のひとつとして新たに加わっている、または他社のふりかけからスイッチしているということではないかと見ている」(吉田課長)。
また最近の傾向として、「こだわり食感」のようなインパクトの強いふりかけがよく売れている。それは不景気になると、お弁当が増えたり、家庭の食事のおかずを1品減らしたりする。そうしたときの補いとしてふりかけを使用するので、ある程度のインパクトを求める傾向が強くなっているのだという。
さらに以前と違うのは、ふりかけを50〜60代の世代も購入していること。幼少期からふりかけを食べていた世代なので、シニアになっても食べ続けているのだという。つまり、“シニアふりかけ族”が大量に発生しているということだ。そのため、調味料ふりかけのような渋い商品が売れているのだろう。
さまざまな新技術を駆使し、複雑な加工をしたふりかけが増えるなか、ミツカンの単品野菜だけのふりかけのように、素材をシンプルに使うことで、素材感をより強く印象づける製品も登場している。永谷園が2015年2月から発売している「のりしおふりかけ」もそのひとつ。シンプルだが、ふりかけの定番である調味玉が入っておらず、従来のふりかけには使われていない技術を使って青のりを配合しているという。これも、新たに誕生したシニアふりかけ族には受けそうだ。
合計12種類のふりかけを試食して感じたのは、ふりかけがもはや「おかずがないときに仕方なく食べる代用品」ではないということ。むしろ、白いごはんをよりおいしく食べるための嗜好品になっているのではないだろうか。50代以上の人たちが自分が食べたいものを選んで買っているという気持ちがよく分かった。






