【工藤会脱税】立件難しい暴力団マネー、組幹部作成のメモ押収が突破口に 捜査も大詰め

特定危険指定暴力団「工藤会」トップで総裁、野村悟容疑者(68)に対する脱税容疑での捜査が、6日の勾留期限へ向けて大詰めを迎えている。

 捜査線上には傘下暴力団からの「上納金」のほか、建設会社からの「みかじめ料」も浮上。捜査当局が「難しい」とする暴力団マネーに対する脱税事件だけに捜査の行方が注目される。

 暴力団は法人登記されない「任意団体」。傘下組織から納められた上納金などは「運営費」扱いで、PTAや町内会と同じように非課税になる。暴力団の資金を直接取り締まるには、課税される個人所得として認定する必要がある。

 今回の事件で福岡県警は資金管理担当だった組幹部が作成したメモを押収したという。これにより、野村容疑者が組の資金を私的に利用していた実態をつかみ、個人所得と認定する道筋が付いた。

 だが、応用には高いハードルがある。まず、今回のように物証を押さえられることはまれだ。「報復を恐れる組員から供述を引き出すのは難しく、物証がなければ事実上不可能」(法務関係者)とも指摘される。

 また、ある捜査関係者は「組のカネか個人のカネか線引きがあいまいな上、何が暴力団の運営費なのか判断するのは難しい。しかも個人所得の認定には、1年分以上の正しい所得を裏付ける必要がある」と話す。

 それだけに今回の事件は今後の試金石となる可能性がある。関係者によると、関西地方を拠点とする暴力団では、弁護士に相談する動きもあるという。

 長年、暴力団情勢を取材してきたノンフィクション作家、溝口敦さんは、税務申告されることがない上納金を個人所得と認定する脱税容疑での立件について「新しい着眼点で画期的。刑法犯など既存の手法に代わるツールになり得る」と高く評価。

 その特徴について、「特に、自分で手を下すことが少なく立件されにくいトップにとっては新たな脅威になるだろう。工夫次第で他の暴力団にも応用できるのではないか」と期待を込めた。