日経がFTを1600億円で買収、どんなにお金があるの?

日経によるフィナンシャル・タイムズ(FT)の買収が大きな話題となっています。日本のメディア企業としては過去最大規模の海外案件なのですが、日経の経営体力は大丈夫なのでしょうか。

日本経済新聞社は7月23日、英国の経済紙フィナンシャル・タイムズを買収すると発表しました。買収金額は何と8億4400万ポンド(約1600億円)にものぼります。FTの買収には、他の企業も名乗りを上げており、価格がつり上がったといわれています。今回の買収対象には、FTの本社ビルなどは含まれておらず、純粋にFTの事業に対して付けられた値段です。FTの年間の売上高はわずか640億円、営業利益は46億円ですから、営業利益から投資金額を回収しようとすると35年かかってしまいます。実際にはここから税金などが差し引かれますから、場合によっては50年程度の回収期間が必要となる計算です。今回の買収がいかに巨額であるのかが分かります。

 日経は自己資金と銀行からの借り入れで買収費用を手当てすると説明しています。全世界的に新聞離れが進んでおり、新聞社の経営はどこも苦しいといわれていますから、日経は今回の買収でかなり無理をしたのではないかと想像されます。ところが、現実はそうではありません。

 新聞離れが進んでいるとはいえ、日本経済新聞には企業からの広告が大量に入っており、同社の経営は実は順調そのものです。2014年12月期における売上高は約3000億円、経常利益は約190億円でした。経常利益率は6.3%ですから、国内の上場企業の平均値を上回っています。しかも同社の自己資本比率は70%近くに達しており、財務体質は盤石といってよいでしょう。手元には1000億円のキャッシュがありますから、銀行から資金を借り入れることで、問題なくFTの買収を実施できるはずです。

 むしろ、日経にとっての懸念材料は買収した後の展開でしょう。財務体質が盤石といっても、同じようなM&Aを今後何回も連続して行う経営体力は同社にはありません。しかし、FT社の買収だけで、今後のグローバル展開が簡単に進むほど、世界市場は甘くないと考えられます。

 両社のビジネス基盤を融合させるのは、そう容易なことではありませんから、仮に買収の成果が出てくるにしても、一定の時間がかかりそうです。