苦くないビールで若者の心つかめ 柑橘、チョコ…フレーバー色々
従来の苦いビールとは一線を画し、果物や野菜などの独特の風味をつけた、甘めの「フレーバービール」が人気を集めている。若者のビール離れ阻止などが狙いで、こうしたビールの種類が多い欧米からの輸入が進む中、国内メーカー各社も相次いで新商品を市場に投入。レモンやトマト、チョコレート風味の商品も登場し、新たな市場開拓に乗り出している。(中山玲子)◆片手でおしゃれに
キリンビールは昨年秋、流通大手のセブン&アイ・ホールディングスと共同開発したレモン味の発泡酒「キリンフレビアレモン&ホップ」(213円)を発売した。
「苦みが少なく、レモンの香りやほのかな甘さが特徴」(担当者)といい、20〜30代の男女を主なターゲットにしている。容器は300ミリリットルのスリムな瓶を採用。片手でおしゃれに飲めるデザインにした。
サントリービールは今年3月、レモン風味とビールの風味を調和させた「サントリーラドラー」(350ミリリットル、205円程度)を発売した。
ラドラーは、もともとドイツで伝統的に親しまれているビール。欧州で若者や女性を中心に近年人気を集めており、新たに投入した。「まだまだ認知に時間がかかるが、需要を拡大していきたい」(同社広報)と意気込む。
アサヒビールは、トマトの入った発泡酒「アサヒレッドアイ」(350ミリリットル、205円程度)を展開する。カゴメと共同開発し、厳選トマトの果汁を使用。平成24年にコンビニエンスストアで期間限定発売したところ、3カ月で目標の2割増となる12万箱(1箱は633ミリリットルの大瓶20本)を売り上げた。
予想を上回る人気があったことから、昨年2月にパッケージを刷新。通年販売に切り替えた。同社は「他の商品と比較して、20〜30代の消費が多い」と分析する。
◆地ビール業界も
地ビール業界なども、フレーバービールに注目している。
大阪府箕面市の地ビール「箕面ビール」は、バナナの香りが漂う「ヴァイツェン」(330ミリリットル、410円)を製造・販売する。実際にバナナの果汁や果肉は入っていないが、フルーティーな味を実現しており、特に女性には人気という。
地ビールのサンクトガーレン(神奈川県厚木市)は毎年のバレンタインシーズンに珍しい「チョコビール」を醸造・販売する。チョコレートやカカオは使わず、チョコレート麦芽を使用することで、ビターなカカオ風味を生み出した。
宮崎県都城市の霧島酒造は、地元特産の柑橘(かんきつ)類「日向夏(ひゅうがなつ)」を使った「霧島ビール日向夏」を販売。レモンやショウガも加えて、すっきりとした夏向きの味わいに仕上げた。
◆海外からも続々
こうしたユニークなビールは、海外からも次々と輸入されている。
アサヒビールが業務用のみで販売するベルギービール「ベル・ビュークリーク(発泡酒)」は、サクランボ入りのルビー色のビールで、酸味と甘さが特徴だ。グレープフルーツジュースの入ったドイツの「シェッファーホッファーグレープフルーツ」も、苦みが少なく柑橘系のさわやかな味が人気を集める。
最近は、ドイツ生まれのビール祭り「オクトーバーフェスト」を再現したイベントなどが日本各地で開催され、日本の消費者の海外ビールへの関心は高い。
国内メーカー各社は今後、消費者の間でフレーバービールの認知度が高まれば、市場規模は拡大すると予想。特に、従来の苦いビールを敬遠する若者や女性をターゲットと位置づけ、商品開発の取り組みなどを加速させている。