熊谷6人殺害 注意喚起アナウンス 行き違いで実施されず

埼玉県熊谷市の3軒の民家で6人が殺害された事件で、田崎稔さん(55)と美佐枝さん(53)夫妻が殺害された翌日、県警熊谷署が市側に要請した防災無線による注意喚起のアナウンスが、何らかの行き違いで実施されていなかったことがわかった。要請先が防災無線の担当課でなく市教委だったことや、文書でなく口頭での要請にとどまっていたことなどが原因とみられる。県警は「経緯を検証する」としている。

県警によると、14日に田崎さん夫妻が殺害される事件が発生したことを受け、学校や地域住民への注意喚起が必要と判断。15日午前8時45分ごろ、熊谷署が市教委に注意喚起の要請を行った。要請の内容は、日本人・外国人を問わず不審者を見かけたら110番する▽集団登下校を実施し保護者や教職員が通学路で児童・生徒を見守る−−などを市内の小中学校に周知することと、防災無線で地域住民にアナウンスすることだったという。

 しかし、市教委による小中学校への周知は行われたが、防災無線によるアナウンスは行われなかった。県警は「(アナウンスを)口頭で市教委に要請した」としているが、市は「市教委は防災無線の要請を受けていない」と説明している。

 熊谷署が防災無線を使った住民への注意喚起を市に要請する場合は、防災無線を所管する市安心安全課に文書で要請することになっているという。県警は安心安全課への要請をしていなかったことを認め、「今回は(事件への対応などで)混乱していたこともあり、通常通りの要請先や要請方法ではなかった」としている。市によると殺人事件を受けての注意喚起は例がないという。安心安全課は「今後は警察との連携をより密にしていきたい」と話している。