誤算大久保楽天 現場とフロントに亀裂
東北楽天は今季、2年連続のパ・リーグ最下位に沈んだ。パ・リーグ全5球団に負け越したのは、球団創設の2005、06年に次いで3度目。期待された外国人野手の不振に加え、主力の相次ぐ負傷離脱で、戦力が整わなかったのが大きい。監督就任1年目の大久保博元氏は成績不振の責任を取って退任し、2年続けて監督交代を迫られた。今季を象徴するキーワード「一致団結」「超機動力野球」「常勝軍団」を基に戦いの軌跡を振り返り、来季に向けた課題を探る。◎(上)一致団結
<田代氏辞任で下降>
「あれで今季が終わった」。多くのチーム関係者が口をそろえるターニングポイントが、田代1軍打撃コーチの電撃辞任だ。
5連敗で借金9に膨らんだ7月29日夜のソフトバンク戦(盛岡)後、田代氏が球団に辞任を申し出て、慰留も固辞。翌30日夜に発表された。遠征先の大阪市内で急きょ取材に応じた安部井チーム統括本部長は「チームに与える動揺は大きい」と、疲れ切った様子で語った。
「田代ショック」の大きさを物語るのが、辞任以降のチーム成績だ。18勝35敗で、実に負け越しが17。1桁で持ちこたえていた借金は、最終的に歴代ワースト3位の26まで増えた。
田代氏の辞任理由は表向き、打撃不振の責任を取ったとされたが、三木谷球団オーナーへの不満が爆発したのが真相だった。
「今までの野球界の既成概念にとらわれず、新しい野球をやってほしい」と、大久保氏に期待を寄せていた三木谷オーナー。複数の関係者によると、今季はオーナー自ら、打順や作戦、1、2軍の選手入れ替えにまで口を挟むことがあり、現場とのあつれきを生んだ。
「次は先発で使うから頑張れよ」などと言って選手の士気を高めてきた田代氏にとって、現場がフリーハンドで決められない状況は我慢できなかった。
選手からは「言葉は少ないが、一言一言に重みがあった」(ある主力)と信頼が厚かった田代氏。1軍最年長コーチの退団を境に「チームはもう終わっている」「責任を取ると言った監督がなぜ辞めないのか」などの声が渦巻いた。
<選手から信頼失う>
大久保氏は「最後に決めるのは俺。オーナーや球団、コーチじゃない。最終決断は俺がしている」と、しきりに強調した。だが、フロントとコーチ陣の板挟みになり、自分のカラーを打ち出せずに苦しむ。選手からの信頼も失った。
球団は9月上旬、事態の収拾を図るため、シニアアドバイザーだった星野元監督を取締役副会長に起用。編成の全権を与え、チームの立て直しを委ねた。
「屈辱感がない。2年連続の最下位をどう思っているのか。戦う集団になっていない」。延長の末に敗れた6日の今季最終戦後、星野副会長は本拠地コボスタ宮城(仙台市)で怒りをぶちまけた。
今季のスローガンは「一致団結」。それを言い続けた大久保氏は、チームを去った。