郵政3社の株は買いなのか? 11月の大型上場に市場の期待高まる

上場する郵政3社は?
株式を上場するのは、日本郵政株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険の3社です。日本郵政は、持ち株会社となっており、既存の郵便事業と、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式を保有する会社となります。ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、それぞれ銀行業務、生命保険業務を行う金融機関という位置付けです。同じ郵政グループといっても、3社は別の業態であり評価基準もバラバラですが、持ち株会社である日本郵政は、結局のところ傘下の金融2社の業績に引きずられますから、最終的には金融2社の業績に依存しているとみてよいでしょう。業績予想と成長力はどんなもの?
日本郵政の2015年3月期における当期利益は約4830億円、ゆうちょ銀行は約3700億円、かんぽ生命は約820億円となっています。各社が公表している2016年3月期の業績予想は、日本郵政が3700億円、ゆうちょ銀行は3200億円、かんぽ生命は840億円ですから、かんぽ生命を除くと来期は減益予想ということになります。しかもかんぽ生命の利益の額は小さいですから、全体に対する影響はあまり大きくありません。上場直後から利益成長によって株価が上昇するというシナリオは描きにくいのが現実です。株価の割高、割安を示すPER(株価収益率)は、仮条件価格の上限で計算すると、日本郵政が16.4倍、ゆうちょ銀行が17倍、かんぽ生命は15.7倍となり、上場している他社と比較すると割安感があります。しかしPERが低いということは割安とも解釈できますが、今後の成長力が乏しいことの裏返しでもあります。同グループが以前に公表した中期経営計画によると、グループ全体における連結純利益は2017年度に4500億円程度となっていますから、大きく状況が変わるとは考えない方がよいでしょう。
投資対象としての魅力は?
ただ投資対象として魅力がないのかというと、そうとも言い切れません。安倍政権はコーポレートガバナンス改革を進めており、株主に対する利益還元を企業に強く要請しています。国策企業である郵政グループは、当然、こうした要請に応える必要があります。同グループでは、配当性向を50%にする目標を掲げており、同じく上限価格を使って計算すると、配当利回りは各社とも約3%と計算されます(2016年3月期については配当性向は25%程度となっており、実際に50%になるのは2017年以降の見込みです)。配当が手厚い米国企業では当たり前の水準ですが、株主還元に積極的ではない日本企業としてはかなりの高配当です。市場全体が下落するような場合は例外ですが、高配当を狙った安定的な銘柄として検討する価値はあるかもしれません。