日産がハンドル消える車−完全自動運転へ自動車各社の開発急ピッチ

ドライバーの操作が不要の完全自動運転車の実現に向けた技術開発が加速している。国内自動車大手は東京モーターショーにコンセプトモデルなどを出展し、最新技術を披露する。

国内自動車大手は東京五輪開催の2020年ごろをめどに、高速道路で完全自動運転の実現を目指している。日産自動車では20年までに一般道路での走行を計画している。高齢化が進む日本では交通事故の減少や渋滞の回避に向け、自動運転技術の開発進展が期待されている。

日産が発表した自動運転の最新コンセプトモデルは、ハンドルを格納してドライバーを運転から解放するモードを設定している。電気自動車の「ニッサン IDSコンセプト」には自動運転と手動運転の2つのモードがある。自動運転では運転席のハンドルを自動的に格納し、シートの向きも調整して、ドライバーを含めた乗員がゆったりとしたスペースでくつろげる。

この日産車は人工知能(AI)でアクセルやブレーキの踏み方、ハンドル操作など個々のドライバーで異なる走り方や癖を学習し、自動運転モードにするとドライバーの好みを反映した「心地よい走り」を提供してくれる。

日産は16年末までに混雑した高速道路を安全に走行できる自動運転技術を日本市場に導入予定だ。18年には高速道路で自動的に車線変更して、複数レーンでも走行可能にし、20年までには交差点を含む一般道路にも対応できるように計画している。このほど発表した最新の実験車両ではカメラとミリ波レーダー、レーザースキャナーなど複数のセンサー部品を組み合わせて車の周囲の詳細な情報を取得できる。

機械のほうが運転うまい

日産の浅見孝雄専務は、認知や判断、操作といった運転の基本能力では機械が人間の100倍の性能を持っていると指摘。「機械のほうが人間よりも運転がうまいというシーンが増えていくのが自動運転の導入の最大の動機になる」とし、交差点で道の譲り合いなど判断が難しい部分の認知能力向上を目指してAIの技術開発を進めていると話した。

ホンダは20年までに、高速道路の入口から出口まで、合流、車線変更、衝突回避などを自動運転で走行できる技術の実現を目指している。栃木県の研究所で24日に公開した技術では、これまで時速65キロメートル以上でなければ車線を検知しながら前走車を追従することが難しかったシステムを改良し、停止状態からでも走行可能にした。

時速100キロ超を自動運転

デモンストレーションでは横の車線から割り込みがあっても、減速して安全な距離で走行した。これにより、渋滞時もストレスをためず、事故を減らせるとしている。あらかじめ設定したルートを走行するライントレース制御では、急カーブの連続を時速100キロを超えるスピードでタイヤを軋ませながら自動で運転した。高精度GPSで車両位置を確認し、数センチのずれも自動計算して速度やタイヤを制御。路面状態によっても複数の選択肢から最適条件を選び出して軌道修正する技術で、特許出願中だ。

ホンダは昨年10月、独自の先進安全運転技術「ホンダセンシング」を発表し、15年発売の新型レジェンドから搭載し始めた。ミリ波レーダーと単眼カメラの2種類のセンサーで障害物の位置や速度のほか、車両前方60メートルまでの歩行者や対象物体、大きさなどを識別。歩行者と衝突が予測される場合はハンドルを自動操作して衝突を避けるシステムなどを世界で初めて実用化した。20年までにホンダセンシングに新機能を追加しながら高速道路での完全自動運転につなげていく予定だ。

トヨタ自動車も車が高速道路へ進入して出口に着くまでスイッチ操作ひとつで済ませられる自動運転技術を今月公開し、20年ごろの実用化を目指している。これまでは自動運転を安全確保のためのドライバーの運転支援技術としてきたが、吉田守孝専務は高齢者や身体障害者にも移動の自由を提供するため、運転手が介在しない完全自動運転の実現も考えていると述べた。

日本自動車工業会の池史彦会長(ホンダ会長)は26日、東京ショー開催に先立ち会見し、自動運転の実現には法規制などの課題もあるとした上で、完全自動走行システム実現を目指す政府の後押しもあり、日本には技術開発を推進していく条件が整っていると指摘した。日本で部分的な自動運転技術は20年ごろから投入が進み、完全自動運転に進むのは25年ぐらいからとみている。