自動車「タカタ離れ」加速 エアバッグ 回収や訴訟、膨らむ負担
欠陥エアバッグのリコール(回収・無償修理)報告の遅れをめぐり、自動車部品大手のタカタは米当局と約242億円の制裁金支払いで合意した。だが、今後もリコール関連費用や訴訟費用などが経営に重くのしかかる。ホンダがタカタ製エアバッグ部品の調達中止を表明したように、自動車メーカーの“タカタ離れ”が進む恐れもあり、経営への打撃は計り知れない。「経営へのインパクトはあるが現在、資金繰りのリスクにはいたっていない」
高田重久会長兼社長は4日の会見で、今後の経営に対する懸念を打ち消すと同時に、エアバッグ事業からの撤退を否定した。また、経営責任についても「部品交換を継続し、安全の供給に注力するのが最大の責務だ」と強調した。
だが、同社の先行きに対し、市場は厳しい視線を送っている。この日の東京株式市場でタカタ株は急落し、終値は休日前の2日終値比184円安の1189円となり、下落率は13%を超えた。背景には制裁金に加え、リコール関連費用が膨らむとの懸念がある。
メーカーの自主的な回収を含め、リコール対象車は世界で約5千万台ともされる。だが、タカタが平成24年度以降で費用計上したのは約1千万台分の約800億円にとどまる。残る車両分は、現時点で自動車メーカーが負担している。
メーカー側は、原因が究明された段階で「お互いの責任割合を決める話し合いをして、費用を請求する」(ホンダ幹部)方針。費用は全体で数千億円規模になる恐れもあり、タカタが「債務超過に陥る事態も否定できない」(アナリスト)という。米国ではタカタに対する集団訴訟も起きており、多額の罰金や和解金の支払いも懸念される。
ホンダがタカタ製のガス発生装置の使用中止を表明した衝撃も大きい。エアバッグ以外の製品も含めたホンダ向けの取引は、タカタの売上高の1割以上を占める。他メーカーもホンダに追随する可能性が高い。
タカタは他社製のガス発生装置を使ったエアバッグの供給や、ガス発生剤の変更を打ち出した。しかし、ガス発生装置はエアバッグの利益の大半を占めるとされており、利益率の悪化やコスト増も想定される。問題の長期化や不十分な対応に、消費者の不信感も高まる。タカタは今回、ガス発生装置に使う硝酸アンモニウムの段階的な製造・販売中止を決めた。しかし、現在市販されている車両に搭載されたガス発生装置は交換しない。「リコールの対象になっていないものは安全だ」(幹部)としているためだ。国内でも異常破裂が原因とみられる負傷者が出る中で、消費者の不安を払拭できるかは不透明だ。
タカタは一連の問題をめぐる隠蔽(いんぺい)や改竄(かいざん)を否定した。一方、ホンダはタカタの情報提供に不適切なものがあったことを明らかにした。業界では、1・2%を出資するホンダなどによるタカタ救済も現実味を帯びている。