携帯販売、現金還元が再燃 奨励金是正論議、大詰めで“駆け込み”?
年末商戦期を迎えたスマートフォンなど携帯電話販売の現場で、一時は沈静化した巨額キャッシュバック(現金還元)商戦が再燃している。携帯電話料金引き下げや過度の販売奨励金是正などを検討する総務省の有識者会議は16日に報告書を取りまとめるが、大詰めを迎えた議論をよそに携帯電話販売店は多額の現金や商品券で他社からの乗り換えを促す販売手法を続ける。◆最大32万円も
「最大32万円キャッシュバック」。師走を迎えた東京都内の携帯電話ショップでは、他社からの乗り換え客を対象に4人で最大32万円の現金や商品券がもらえるポスターが人目を引いている。札幌市の地下街でも「2人で最大12万円 当日現金渡し」を売りに乗り換え客を誘う。
NTTドコモなど携帯電話事業者は2013年12月〜14年春の年末・年度末商戦で、番号持ち運び制度(MNP)を利用して他社から乗り換える利用者を対象に、販売店に支払う販売奨励金を積み増してキャッシュバック商戦が繰り広げられた。各社がその後自粛したものの、再び多額の現金や商品券が乱れ飛ぶ事態となっている。
携帯電話事業者は「(奨励金を)特別に積み増してはいない」(KDDIなど)と口をそろえる。実際には通常で1人3万円前後、乗り換えで5万円前後の奨励金が販売店に支払われているもようだが、その使い方は販売店任せだ。
安倍晋三首相の発言に端を発した携帯料金引き下げ論議は、16日にまとめる報告書を受けて、総務省が年度内に(1)過度の販売奨励金の是正(2)端末価格と通信料金の内訳を書面で説明(3)携帯事業者の顧客情報を仮想移動体通信事業者向けに開放−を骨子とするガイドライン(指針)を策定する。
指針が実施されれば、多額のキャッシュバックによる顧客争奪戦は影を潜めそうだ。「年度末商戦には適用してもらう」(総務省幹部)考えで、販売店がこの年末商戦で乗り換え客争奪戦に打って出た状況は“駆け込み”ともいえる。
◆潤沢な利益を原資
携帯事業者は否定するが、15年9月中間決算で各社の業績が好調だったことも“駆け込み”説に信憑(しんぴょう)性を持たせている。KDDIの9月中間期の営業利益は4514億円で通期予想に対する進捗(しんちょく)率は55%、ドコモは4625億円で65%、6857億円のソフトバンクは通期予想は未公表だが、前期の9827億円と比較すると実に70%に達する。潤沢な利益をキャッシュバック積み増しの原資にしているとの見方もある。一方、調査会社は「『アイフォーン』旧モデルやアンドロイド端末などスマホの在庫処理も要因」と分析する。
しかし、「こんな割引は今後できなくなります」(家電量販店)というセールストークが利用者の駆け込み意識をあおっているのは確かだ。