愛知夫婦殺害 弁護側「殺害計画否定」 被告に死刑求刑
愛知県碧南市で1998年、パチンコ店勤務の馬氷一男(まごおり・いちお)さん(当時45歳)と妻里美さん(同36歳)を殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われた堀慶末(よしとも)被告(40)の裁判員裁判の論告求刑公判が4日、名古屋地裁(景山太郎裁判長)であった。弁護側は最終弁論で「殺害計画は立てていなかった」として無期懲役刑が妥当と訴えて結審した。検察側は死刑を求刑しており、15日に判決が言い渡される。弁護側は「大ざっぱな強盗計画のもと、場当たり的に行動した結果だ。強盗殺人の発想はなかった」と殺意を否定。里美さん殺害については「現場にはいなかった。殺害を依頼する機会もなかった」と関与を否定した。
堀被告は最終陳述で「前途ある人々の人生を壊してしまった。残された時間を贖罪(しょくざい)のために使いたい」と話し、検察官の隣に座っていた遺族に対し「申し訳ありませんでした」と頭を下げた。
最終弁論に先立ち、検察側は論告で「確実に殺害する手段を取っており、強い殺意があった。自ら犯した罪に真摯(しんし)に向き合っておらず更生の可能性は乏しい」と指摘。馬氷さんの長男一樹さん(25)も意見陳述し、「被告は言い訳をして逃げている」として死刑を求めた。
起訴状によると、堀被告は98年6月28日、男2人と共謀して馬氷さん夫婦を殺害、現金などを奪ったとされるほか、2006年7月20日には名古屋市守山区で無職女性(78)にけがをさせ、貴金属などを奪ったとされる。
堀被告は、名古屋市千種区で07年、帰宅途中の女性が拉致・殺害された「闇サイト殺人事件」の実行犯3人のうちの一人。12年に無期懲役刑が確定した。【大野友嘉子、金寿英】
◇求刑に表情変えず
「被告人を死刑に処すべきだ」。闇サイト事件で既に無期懲役が確定、服役中の堀慶末被告(40)は夫婦2人が殺害された強盗殺人事件で、検察側にあらためて死刑を求刑されても、被告人席でうつむき、身じろぎしなかった。表情も変えなかった。
頭を丸め、緑色の作業服姿で出廷。検察側が論告で時折「極刑を回避すべき事情はない」と指摘すると、つばをのみ込んだ。求刑が終えると、大きく息を吸い込むようなしぐさもみられた。