イチローの3000本達成が早まる2つの可能性

マーリンズと早々と1年契約を延長したイチローを来季待ち受ける大きな舞台が、メジャー通算3000本という大記録だ。残り65本。今季同様の試合出場をクリアできれば達成は間違いないが、来季も「第4の外野手」の立場は変わらない。だが、ここにきて追い風が吹いてきた。 

 現地時間のこの日、米国のメディア、MLB.comが、マーリンズがマルセル・オズナ外野手のトレードに成功すれば、42歳になったイチローの来季の出場機会が増え3000本到達のチャンスが高まるという展望記事を配信したのだ。

 マーリンズは、今季123試合に出場し、打率.259、10本、44打点の成績に終わり、夏場には不振でマイナー落ちも経験したオズナと先発候補ピッチャーとの交換をマリナーズに持ちかけるなど、現在、トレードを模索している。オズナの代理人であるスコット・ボラス氏が、起用法に介入してきたことなども手伝い、マーリンズは、オズナを放出要員としている。

 同記事では、マーリンズは、先発投手を獲得するためのトレード要員としてマルセル・オズナ外野手を放出すべきで、そうなるとイチローの出場機会は増えるが、例えオズナが残留したとしても出場機会が増えるだろうと予測した。
 
 執筆したジョー・フリサロ記者は、今季、クリスチャン・イエリッチ、ジャンカルロ・スタントンの怪我により「第4の外野手」だったイチローの試合出場数153試合が、外野手の中でトップだったという流れを伝えた上で、新しく監督に就任したマッティングリー監督の「イチローに敬意を抱く、彼の野球に対する考え方や、取り組み方を評価しているし、イチローはチームのための大事なキーであり、チームが進化するための重要な選手だ」とのコメントを紹介。
 残り65安打と迫ったメジャー通算3000本安打の達成は、2016年のマーリンズにとって、もっとも期待感の高まるストーリーだと報じた。

同記事は、来季外野手をどういう組み合わせで使うか、マッティングリー監督のイチローの起用法が、注目点だと指摘。センターのオズナをトレードに出した場合は、イエリッチがセンターにコンバート、デリック・ディートリッチがレフト、スタントンがライト、イチロー以外に、コール・ギレスビーがスポットで控え、ロースターに入っていないジャスティング・マクドエルがさらに控えているという。

 マッティングリー新監督は、ドジャース監督時代からスタメンを相手の先発投手に応じて、右左の打者を変幻自在に起用していくことが有名。加えて右手を骨折したことで、今季復帰が間に合わなかったスタントンの故障の回復具合や、まだ、メジャー実績が3年しかなく、今季6月にマイナーから昇格、90試合、打率.256、10本、24打点の26歳のディートリッチがどこまでできるかも未知数。そうなるとイチローの対右投手用のスタメン出場など出番が増えることは間違いない。

 今季からはバリー・ボンズが打撃コーチに就任したが、マッティングリー新監督が「外野をどういう組み合わせにするのか。イチローとボンズが同じチームで、仕事をすることも楽しみだ。ぜひ、イチローとボンズに会談を持ってもらいたい、私がマネジメントしたい」と語っているとも報じた。
 マッティングリー新監督も、3000本達成にリーチをかけているイチローと、メジャー歴代最多アーチ記録を持つボンズとの“レジェンド”の合体がチームにもたらす相乗効果に期待をしているようなのだ。

 打率は.229と低迷したイチローが、ボンズからの刺激で、復活へのヒントをつかむ可能性もなくはない。ぶれない哲学や理論を持ち、そのほとんどを独自に昇華させていくのがイチロースタイルだが、ボンズとなると別格だろう。その声に耳を傾け、高い次元のアスリート同士にしかわからぬ何かを得るかもしれず、ボンズとの遭遇も、また来季の出場機会が増え、3000本安打到達が早まりそうな要因のひとつ。

 今季のイチローは前半戦に47本、後半に44本の合計91本のヒットを打った。月間平均は、15.2本。このペースで考えると、2016年8月には通算3000本を達成する計算になるが、来季の出場試合数や、今季398あった打数がさらに増えることになると、大記録達成は7月に繰り上げになるのかもしれない。