米FOMCで歴史的利上げ局面入りか、全てはその後−注目点探る
15日から2日間の日程で会合を開いている米連邦公開市場委員会(FOMC)は、ワシントン時間16日午後2時(日本時間17日午前4時)に声明と新たな四半期経済予測を発表し、2時半からはイエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長が記者会見する。
エコノミストとトレーダーは、米金融当局が2006年以来の利上げに踏み切り、前例のない金融緩和期の「終わりの始まり」を画すことになると予想。商品相場の落ち込みを背景に高利回り債市場が急落に見舞われ、金融指標に動揺が走ってトレーディングデスクに不安が広がる中での引き締め開始となりそうだ。
ジャンク(投機的格付け)債市場をめぐる懸念は拭いようがないが、米経済情勢はようやく大方が予想する利上げ開始を支持する方向にある。雇用の伸びは維持されて個人消費は堅調であり、緩やかなペースでの生産も続くなど、最近のデータは景気拡大の勢い持続を示す。
インフレ率は米金融当局が目標とする2%を依然下回ったままだが、中国やユーロ圏の各国・地域の当局が内需促進に努めていることで、先行きを展望する上で海外からのリスクは以前に比べ後退している。
記者会見に臨むイエレン議長は、今回のFOMCでの利上げ決定に至った理由、あるいは予想外の金利据え置きとなった場合でも、その根拠を説明する機会を持つ。議長はまた、市場関係者やエコノミストにとって次の焦点となる将来の利上げの工程表を披露する可能性がある。
緩やかなペース
新たな利上げサイクルがどのような傾斜を描くかをめぐる最も良い手掛かりとなるのは、FOMC参加者による最新の経済予測の図表のうち「ドット(点)」で示されるフェデラルファンド(FF)金利の将来見通しだ。9月の予測では来年中に4回の利上げが見込まれていたのに対し、先物市場が現在織り込んでいるのは2回だけとなっている。
TDセキュリティーズの米金利ストラテジスト、ジェナディ・ゴールドバーグ氏(ニューヨーク在勤)は、「利上げ開始は基本的に確実な情勢だ」とした上で、来年の利上げ回数の予想が4回から減れば、「ハト派的な引き上げと受け止められるだろう」と指摘した。
イエレン議長は2日の講演で、「FF金利の適切な道筋について将来決定を下す上で、われわれのインフレ目標に向けた実際の進展を注意深く監視する」と述べた。米金融当局者は利上げ開始の決定についてはこうした「実際の進展」よりも予見的なインフレ期待を注視してきたため、2日の議長発言は目標達成に向けた当局のコミットメントを一段と強化した形だ。
ゴールドマン・サックス・グループのザック・パンドル、ジャン・ハッチウス両氏は11日のリポートで、「政策の正常化が進められる中で、実際のインフレ率が目標に回帰している証拠を見ることが一層重要になる」とコメント。ただ、「FOMCは多少の柔軟性の確保を望むと考えられ、声明で今後のインフレ統計と政策金利の道筋を直接リンクさせるようなことはないと予想される」と付け加えた。
利上げの手法
米金融当局は6月、利上げの具体的な手法に関する「実施ノート」も声明に合わせて公表する方針を示唆していた。利上げ決定が下された場合、FF金利を新しい目標レンジに誘導するための戦略として、超過準備の付利(IOER)や翌日物リバースレポの金利および上限を新たに打ち出すことになりそうだ。
TDのゴールドバーグ氏は「政策運営の詳細は大いに注目されている」と述べるとともに、「われわれは前例のない利上げに向かい、米金融当局はこれほど大きなバランスシートを抱えた状態で金利を引き上げたことはなく、人々はそれがきちんと機能することを確認したいと望んでいる」と話した。
ジャンク債の相場急落を受けて金融当局が利上げを見送る公算は小さいが、イエレン議長は会見でこの問題に関し質問を受ける可能性がある。米年金基金TIAA−CREF(米教職員保険年金連合会・大学退職株式基金)のチーフエコノミスト、ティム・ホッパー氏は「米金融当局は実体経済への波及のリスクを常に見守るだろう」と指摘した。