黒田に6億円 広島“男気”提示できたワケ
球団も男気を見せたということか。広島の黒田博樹投手(40)が17日、マツダスタジアムで契約更改交渉に臨み、2億円増の現役最高年俸となる6億円プラス出来高払いでサインした。20年目のシーズンを迎えることになった男気右腕には、あと7勝に迫った日米通算200勝達成とともにチームの25年ぶりリーグ制覇へのけん引車としての期待が高まっている。かつて年俸の上限が2億円だった広島がこれだけの金額を提示できたのは、なにも“あのお金”をアテにしているからではなかった。一時は今季限りでの引退を考えつつも、現役続行を決意して契約更改に臨んだ黒田は「球団やファンを含め、いろんな人に『まだやれる』と言ってもらって、それに応えるのもプロかなと感じたし、社交辞令かもしれないが、若いピッチャーから『来年もよろしくお願いします』と言葉をかけてもらった。ここで辞めるという決断はできなかった」と晴れやかな表情で自らの決断について語った。
41歳で迎える来季はあと7勝に迫った日米通算200勝の達成が期待される。これまでは個人記録に興味を示さなかったが「やる以上は一つでも多く勝たないといけないし、勝ちたい。一つのモチベーションになると思う。ただ、精一杯やれれば199勝でもスッキリすると思う」と偉業達成への意欲とともに、6億円という年俸への責任感をにじませた。
かつて「2億円」が年俸の上限といわれた時代もあった広島としては異例の大幅アップ。もちろん理由は11勝という白星だけではなかった。鈴木球団本部長は「成績だけではない。帰ってきたことで社会現象にもなり、チケットやグッズなども(売り上げが)想像を絶した。彼がいることでチームも優勝できるという雰囲気になる。日本球界にとってそういう選手がいるということが素晴らしい」と説明した。つまり、空前の“黒田景気”が現役最高年俸となる6億円を捻出可能にしたというわけだ。
現在はエースの前田健太(27)がポスティングシステムを利用してのメジャー移籍を目指している。その譲渡金は上限の2000万ドル(約24億4000万円)に設定したと見られるが、それをアテにしたものではないという。ある球団幹部は「たとえマエケンの譲渡金がなくても黒田の年俸の額は同じ。もちろんマエケンの移籍はうまくまとまってほしいが、残留したとしても問題ない」と声を大にした。
いわゆる“マエケン資金”は球場の設備拡充や練習環境の改善に充てる見込み。仮に移籍が実現しなかったとしても前田の年俸は「結構なアップになる」(同)というから、資金面では何の問題もないというわけだ。そうした事情もあるだけに黒田も「いろんな選手に勇気を与えられたかなと思う。前回いたときには(年俸6億円は)考えられない。カープであるから意味がある」と感慨深げに話した。
ただ、一過性のブームやフィーバーで終わらせてしまったら価値もなくなってしまう。黒田の背負った十字架は、その重みも相当なものだ。(金額は推定)