キリン赤字 ブラジル経済が25年に急減速 海外展開に落とし穴も

キリンホールディングスの平成27年12月期業績予想の下方修正は、ビール業界の海外展開の難しさを浮き彫りにした。国内ビール市場が縮小する中、国内のビール各社は海外事業を強化している。だが、新興国の景気停滞などにより、相手先企業の成長という“前提”が崩れれば、業績の重しとなる恐れがある。

記者会見した溝内良輔常務執行役員はこう陳謝した。キリンがブラジルのビール大手、スキンカリオール(現ブラジルキリン)を買収した23年当時、ブラジル経済は好調で、ビール市場も年率5%成長を続けていた。

 だが、25年にブラジル経済は急減速した。通貨レアル安による原料調達コストの上昇も収益を直撃。買収当時は1レアル=50・35円だったのに対し、キリンの見込みでは今年末に1レアル=36・38円と38%も下落する。溝内氏は「全く予想していなかった」と振り返る。

 ビール業界では「激しい競争を繰り広げるブラジルの市場でキリンが存在感を示すのは容易ではない」(大手ビール幹部)と冷ややかな声もある。回復への道は決して平坦(へいたん)ではない。

 一方、ビール業界ではアサヒグループホールディングスがアジアやオセアニアなどで事業を展開。サントリーホールディングスも中国や米国などで、サッポロホールディングスは東南アジアなどに進出している。

 米国の利上げなどで新興国景気の先行きに不透明感が強まる中、他のビール各社にとっても“対岸の火事”とはいえない。