進化するビジネスホテル、4大チェーンの「良い点」「惜しい点」

筆者はホテル評論家としてホテルのサービスを見ることをモットーにしており、国内にあるホテルと名の付く施設に日々泊まりまくっている。近ごろ、特に進化著しいと感じるのが「ビジネスホテル」だ。

 本来、ビジネスホテルは“ローコストタイプ”で機能性重視というスタイルが基本。ところが近年、多様な付加価値を打ち出すホテルが増加してきた。「ビジネスホテルだけど広い客室がほしい」「ビジネスホテルだけど快適なベッドがほしい」「大浴場は嬉しいができれば露天風呂も」等々、ビジネスホテルとはいえ、利用者の求めるサービスは日々拡大している。チェーン間競争が激しいビジネスホテル業界にとって、顧客獲得は至上命題。利用者の要望を実現することは重要だ。このような現況から“ハイクラスタイプ”といわれるホテルチェーンも登場、人気を博している。

 依然支持率が高いローコストタイプから新たな需要を開拓しているハイクラスタイプ、それぞれの有名チェーンの、【優れている点】【注意したい点】を整理して紹介しよう。

お得感を優先するなら「東横イン」(ローコストタイプ)

【優れている点】

 全国各地の主要駅前には「東横イン」、といっても過言ではないほど認知されているチェーン。ホテルの料金は繁閑等で変動するのは常識であり(レベニューマネジメント)、目を疑うような料金設定もみられる中、東横インは“料金変動が少ない”ことでも支持されているチェーンだ。そんな東横インはビジネスホテル業界のパイオニア的存在ともいえる。

 例えば、今や当たり前の客室に置かれた空の冷蔵庫。これを初めて導入したのが東横インと言われている。また、ローコストタイプで定番となった“無料朝食”(無料とはいえ宿泊料金に転嫁されていることはいうまでもない)。これも東横インがはじまりとされている。その他、市価より安い自動販売機やロビーにセットされた無料ミネラルウォーターサーバーなど、お得感の打ち出しも秀逸だ。

【注意したい点】

 一方で、シティホテルはもちろん、アッパーなビジネスホテルでも導入が進んでいる“デュベスタイル”(ボックスタイプの掛け布団カバーを用いた羽毛布団によるベッドメイキング)の未採用や、マットレスのホールド感不足など、滞在の質を重視するゲストには物足りないかもしれない。また、豪華ブッフェメニューまで登場しているローコストタイプの無料朝食競争下にあっては比較的簡素な内容。とはいえ、必要なものを必要なだけというチェーンホテルの安心感はピカイチと言えるだろう。

眠りの質にこだわるなら「スーパーホテル」(ローコストタイプ)

【優れている点】

 質の高い眠りといえば高級ホテルをイメージするが、最近ではビジネスホテルも快眠に気遣うケースが見られる。各チェーン、ベッドや枕などよく研究しているが、快眠追求のパイオニア的存在が「スーパーホテル」だ。大学や異業種企業と連携した「ぐっすり研究所」を設け快眠研究をすすめている。

 最近人気の“選べる枕”、ロビーでお好みの枕をピックアップするスタイルであるが、これもスーパーホテルがブームの火付け役。150cm幅ワイドサイズのオリジナルマットレスや枕はもちろん、照明も眠りを気遣った照度設定を意識しているという。そのスーパーホテルが、“ハイクラスブランド「Lohas(ロハス)」”も展開し、手厚いサービスに加え、さらに質の高い睡眠がとれると評判だ。

【注意したい点】

 快眠がコンセプトだけに、例えば客室でがむしゃらに仕事をしたい場合や、煌々とした照明に安心感を覚えるという向きには物足りない客室だろう。また、スーパーホテルでは、大浴場を設ける施設もあるが、限定的なスペースの上、サウナなどの設備はない簡素なケースが多く、大浴場設置という売り文句でチェックインすると、お風呂好きには物足りないかもしれない。

 同ホテルチェーンの特色として、キーの代わりに“暗証番号が記された紙”が渡され、客室ドアノブにある暗証番号ボードをプッシュして解錠するキーレス方式を採用している。キーを保管する手間はないが、慣れないと紙を客室に置いて外出してしまったり、紛失してしまったという声もある。紙が渡されたら携帯電話などで番号を記録しておくことをオススメする。

大浴場につかりたいなら「ドーミーイン」(ハイクラスタイプ)

【優れている点】

 大浴場を設けるビジネスホテルが増えた。とはいえ一部店舗のみの設置だったり、さほど広くない場合も多い。そのような中で、温浴施設が主体ともいえるコンセプトを打ち出し、大人気を博しているのが「ドーミーイン」だ。例えば、北海道旭川市であれば「天然温泉 神威の湯 ドーミーイン旭川」というように、各ホテル名に「天然温泉 “○○の湯”」と冠し、まるで温泉宿のようなイメージを打ち出している。

 ドーミーインの大浴場では、露天風呂やサウナ、冷水浴がマストアイテム。規模は別として一般的なスーパー銭湯と遜色ない充実の設備を誇る。温浴施設以外にもドーミーインの魅力は多い。そのひとつが無料の“夜鳴きそば”だ。飲んだ後ホテルへ戻り、〆のラーメンを楽しむゲストも多い。

【注意したい点】

 顧客満足度は高く、温泉や大浴場のイメージが定着。人気ビジネスホテルチェーンとして人気沸騰を続けているが、ゆえに予約のとりにくいホテルとしても有名だ。有料朝食のレベルはビジネスホテルチェーンとしては高いが、ローコストタイプの無料朝食の充実には目を見張るものがあり、有料と無料のボーダーは接近しつつある。これからは例えば実演コーナーを設けるなど、下位シティホテルクラス並の付加価値が求められるようになるかもしれない。

客室の広さを重視するなら「リッチモンドホテル」(ハイクラスタイプ)

【優れている点】

 法律上、ホテルの客室面積は9平方メートルが下限とされる。一般的なビジネスホテルの客室面積は9〜14平方メートルといった辺りで、平均12平方メートルといったところか。そのような中、18平方メートルクラスという広々空間で人気なのが「リッチモンドホテル」だ。この広さになるとフルサービス型の下位シティホテルにも引けをとらない客室面積。ベッド、デスクの他に、テーブル&チェアなどを置くスペースが生まれる。

リッチモンドホテルは充実したデスクスペースでも知られる。デスクチェアやスタンドなどへの気づかいも一級で、ワーキングスペースとしても利用価値の高い客室だ。もちろんベッドのクオリティも高い。広々空間で快眠できるビジネスホテルは贅沢だ。また、“プレミア”を冠した「リッチモンドホテル プレミア」ブランドが進出しつつある。さらなるプレミアム感を打ち出せるかに注目したい。

【注意したい点】

 これほどのクオリティになると、本格的なレストランやハイセンスな温浴施設を求める声もあるが、あくまでも宿泊主体型のリッチモンドホテル。一般的なファミリーレストランがテナント入居しているリッチモンドホテルは数多くあるが、わざわざ着替えてひとりファミレスというのも億劫。一方、ルームサービスを提供している店舗もあるのでチェックしたい。いずれにせよ、ハイクラスブランドとはいえ、ホテル全体を利用してステイを楽しみたいゲストには物足りないだろう。

 ローコストタイプであれば、コンビニで弁当と発泡酒でも買って部屋で夕食というのもマッチするが、リッチモンドクラスのハイグレード感の前では何となくミスマッチ。ゲストひとりひとりに気づかうスタッフのホスピタリティマインドが高いだけに、コンビニの袋をさげてスタッフの前を通過するのは何だか恥ずかしい気がする。

続出するハイクラスブランド

前出のスーパーホテルLohasのように、既存のホテルブランドからハイクラスを意識したブランド展開するチェーンが増えている。例えば、ロードサイドホテルとして知られる「ホテルルートイン」は、「ルートインGrand」というハイクラスブランドを展開している。

 そのような中、全国規模で拡大を続けている「マイステイズ・ホテルチェーン」にも注目。ビジネスをはじめ、シティ、リゾートなど多彩なスタイルのホテルを展開する中、ハイクラス型の「マイステイズプレミア」というワンランク上の滞在を提案。新築はもちろんだが、既存ホテルのリブランドによる改装手法は秀逸で、様々なカテゴリーのホテルを運営する会社ならではのセンスが光る。

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 ビジネスマンの出張宿として定番のビジネスホテルだが、今やファミリー、ひとり旅の女性、訪日外国人など、利用者層は広がりを見せている。機能性や利便性が重視される業態であるが、多彩な付加価値を打ち出さなければ生き残れない時代に突入している。もはや「ビジネスホテル」というネーミングが、施設の実態に合うのかも疑問。百花繚乱の様相を呈するホテルに、今度はどのようなサービスが登場するのだろうか。