女児遺棄 保護者会長逮捕「見守りに懐疑の目、不安」…全国の活動地域に衝撃
ほぼ毎朝、通学路の同じ場所に立ち、熱心に児童を見つめていた。周囲から地域防犯の中心的な存在と目されていたのが、千葉県の小3遺棄事件で逮捕された渋谷恭正(やすまさ)容疑者(46)だった。登下校時の見守りは幼い女児が連れ去られ、殺害された痛ましい事件を教訓に全国に普及した。過去の現場で地道な活動を続けてきた住民は「子供の被害を防ぐことはできないのか。絶望的な気持ちになる」と打ちひしがれた。◆警戒心抱かず
千葉県松戸市教育委員会などによると、渋谷容疑者は昨年、市立六実(むつみ)第二小の保護者会会長に就任。この会では、数人の保護者が通学路を巡回しながら子供の様子を見守っていたが、渋谷容疑者はそれとは別に、自ら買って出て学校の近くにある丁字路の突き当たりに立つことを望んだという。
近所の人も、交通整理用の赤い棒を手にして立つ渋谷容疑者を頻繁に見掛けている。殺害されたレェ・ティ・ニャット・リンさん(9)もここを通り、互いによく知る関係だったとみられる。市教委は「ほぼ毎朝だったので、そのたびにリンさんと顔を合わせていた可能性が高い」と説明する。
「子供たちの安全を守りたい」などと発言していた渋谷容疑者は、学校行事でも計画立案にかかわり、学校と地域のパイプ役を果たしていた。渋谷容疑者の近所に住む女性は「知人だから警戒心を持たなかったのかもしれない」と話した。
◆誰を信じれば
「子供たちはいったい誰を信じればいいのか」。神戸市長田区で平成26年9月に起きた小1女児殺害事件で、女児=当時(6)=が通っていた市立名倉小の森田忠実校長(58)は、見守り活動のメンバーが逮捕された千葉の事件にショックを隠せなかった。
長田区の事件で、殺人などの罪に問われた君野康弘被告(50)=2審無期懲役、大阪高検が上告=は名倉小近くの路上で、女児に「絵のモデルになってくれないか」と声をかけて自宅に連れ込み、殺害した。
事件後、名倉小では児童が一人きりになる時間帯を少しでも減らそうと、教員が連日夕方に校区のパトロールを実施。地域住民も週5日、登下校に合わせて通学路に立つ。
だが地域のつながりをいくら強くしても、その内部に悪意が潜んでいれば防ぎようがない。森田校長は「どれだけ活動をしても子供を狙った犯罪を絶つことができないのかと思うと絶望的な気持ちになる」と話した。
◆活動中止せず
18年2月に通園中の幼稚園児2人が、別の園児の母親に殺害される事件が起きた滋賀県長浜市。現場近くの神照(かみてる)連合自治会の前会長、傍島治さん(63)は「今後は見守りの大人が子供に声をかけても、不審者と思われてしまうのでは。活動が難しくなるのではないかと心配だ」と影響を懸念した。
10年以上にわたって登下校時の見守りを続けているのが奈良市の「富雄子ども安全ネットワーク」だ。16年11月に市立富雄北小1年、有山楓ちゃん=当時(7)=が下校途中に誘拐、殺害された事件をきっかけに発足し、現在は地域住民ら約200人が日々、街頭に立っている。
メンバーの上城戸栄子さん(66)は「今回の事件で、見守り活動に取り組む人にも懐疑の目が向けられるようになるかもしれない。だからといってやめることはありえない。今後もただ子供の安全を考え、地道に活動を続ける」と強調した。






