“祖母“はなぜ埋められた? 周囲が気付いていた男たちの“異変“ 北海道

5月28日、北海道砂川市の山林で83歳の女性が遺体で見つかった事件。遺体発見から8日、UHBは別の窃盗事件で逮捕された男の父親らを取材。“独自証言“で浮かび上がる事件の背景とは。

 街に貼られた“未帰宅高齢者“を捜す張り紙。女性は5月20日に行方不明となり、8日後に変わり果てた姿で見つかりました。

 上空リポ:「山道の脇に、うっそうとした森の中にブルーシートが見えます」

 5月28日、砂川市の山林の土の中で、遺体で発見された滝川市の無職、佐々木けい子さん(83)。上半身には複数の打撲痕があり、警察は殺人の疑いも視野に、死体遺棄事件として捜査を始めました。

「孫に小遣いあげて…かわいがっていた」

佐々木さんの自宅近所の人:「子どもを連れて外出したら『かわいいね』って感じで言ってくれたり…。『まるで自分の孫の小さいころを思い出した』と言っていたのが印象的だった」

 普段は、孫にお小遣いをあげて、かわいがっていたという佐々木さん。しかし…。

 「遺体を埋めた」。

 皮肉にも、事件発覚のきっかけは、佐々木さんの孫らの供述だったのです。

 窃盗の疑いで逮捕されたのは、佐々木さんの孫にあたる29歳の男と、そのいとこにあたる20歳と23歳の男2人の計3人。佐々木さんのキャッシュカードを使用し、現金50万円を引き出した疑いがもたれています。

 23歳男の同僚(取材メモより)「ここ最近になってお金に関して太っ腹になっていた。おごるやつじゃないのに『飯おごるよ』とか言ったりしていた」

 佐々木さんと孫たちの間に一体、何があったのか。関係者がUHBの記者に明かした“異変“とは―

検証 自宅から遺体発見現場までの“道程“

記者「Q. 最後に見たのは? 」

 自宅近所の人:「(5月)8日か9日。自転車で買い物に行くところ。わたしは買い物で帰りで出会った」

 佐々木さんが最後に目撃されたのは、5月10日の自宅前。

 さらに新聞販売店などによると、自宅の郵便受けには5月14日の朝刊から新聞がたまっていました。

 いつもは、その日のうちに取り込まれていたことなどから5月10日〜14日の間に、事件に巻き込まれた可能性があるとみられています。

 佐々木さんが死亡した場所は、まだわかっていませんが、佐々木さんの自宅から遺棄現場までは直線距離で、約4キロです。

 佐々木さんの自宅から、遺体の遺棄現場までの“道のり“を検証してみると…。

 記者;「10分ほど過ぎました。周囲の建物がほとんどなくなってきました」

 田園地帯を抜けると、100メートルほど急こう配の山道が続きます。約13分で現場に到着しました。

 周囲は山林に囲まれています。さらに…。

 記者:「膝丈ほどのガードレールを越えたこの先の森林の中に、遺体が発見された現場がありますが、かなりきつい斜面になっています。このような場所で遺体を運んだと考えると、犯行は難しかったとみられます」

 事件の発覚を恐れたのか…。遺体は、人目がつかない場所の、さらに奥の方に埋められていました。

「一人で行けるような場所じゃない」

遺体発見現場の近所の人:「(現場は)山菜取りの人か、道を覚えてる人がたまに歩くぐらい。大きな車が通ることは、ほぼない」

 遺体発見現場の近所の人:「いやー、全然誰も通らないよ。誰も会うこともないし。でも悪い人は行くかな。とてもじゃないけど、一人で行けるような場所じゃない。特に夜なんか」

 地元でも「土地勘」がある人しか通らないという道。定点カメラを設置し、実際にどれだけ車が通るのか、調べてみました。

 1時間の間に通ったのは、日中にも関わらず、“たった1台“の車だけでした。さらに、夜になると…

 記者:「ガードレールの向こう側が遺棄現場。明かりを消すと、暗くてほとんど見えない」

 辺りを照らす街灯がまったくない現場では、道路を外れた林の視界は、ほぼ“ゼロ“です。

 仮に犯行が夜間だった場合、日中よりもさらに人目につきにくかったと考えられています。

 窃盗容疑で逮捕された男のうち1人は、「1人で遺体を埋めた」と供述。一方、警察は、男らが使っていた複数台の車を押収し、ほかの2人も死体遺棄に関わったとみて調べています。

物静かで優しい…近所の人が知る佐々木さん

夫を数年前に亡くしてからは、遺体発見現場に隣接する滝川市内の一軒家で、一人暮らしをしていた佐々木さん。趣味は家庭菜園でした。

 自宅近所の人:「うちでブドウを作っていた。その時に(佐々木さんが)ブドウが好きだと話していたので、ブドウをちょっとあげたら、そしたらアスパラいただいたり」

 記者:「Q, 出来栄えは? 」

 自宅近所の人:「上手ですよ」

 近所では、物静かで優しい人柄で知られていました。

 自宅近所の人:「町内会費を集めに行ったとき、自分は風邪ひいていたのさ。そしたら『風邪ひいたんだったらね、ひどかったら、電話よこしなさいよ。一人なんだからね』って。そんなこと言ってくれてね」

 自宅近所の人:「子どもを連れて外出したら『かわいいね』って感じで言ってくれたり。『まるで自分の孫の小さいころを思い出した』と言っていたのが印象的だった。こんなことになると思ってなかったから、かわいそうで何と言っていいか言葉にならない」

 自宅近所の人:「お孫さんみたいな人が、屋根の雪下ろしに来ていたのは見ています」

 佐々木さんの親族によりますと、佐々木さんは窃盗の疑いで逮捕された29歳の孫に、普段からお小遣いをあげるなどして、かわいがっていたといいます。

 佐々木さんと3人の間に何があったのか? 。

 窃盗の疑いで逮捕されている佐々木さんの孫で29歳の男の父親が、苦しい胸の内を明かしてくれました。

 父親のコメント:「被害に遭われた佐々木けい子さまへも、心より、ご冥福をお祈り申し上げますととともに、おわび申し上げます」

 「逮捕された3人とも、幼少のころより素直で明るく、このような事件にかかわるとはまったく信じがたく…。誰が何のために何をしたのかわからず、ただただ驚き、悲しみと疑問を感じるのみで、言葉として表せられることができない状況にあります」

金への執着…周囲が気付く“異変“

さらに、周囲の人たちの評判も…。窃盗容疑で逮捕された、23歳の男については…。

 23歳男の知人:「(23歳の男は)明るくて優しい人でしたし、人当りのいい感じでしたね。人の話も“うのみ“にせず、自分の考えを持っていた」

 「まさかと思いましたね、そんなやる感じではなかったんで、誰かと“けんか“をした話も一切聞いていないし」

 記者;「Q.お金に困った話は? 」

 「聞いたことはないですね。仕事をさぼった話も聞かなかったですね」

 金にも困った様子がなかったという23歳の男。一方で、取材を進めると、事件が起きたとされる5月10日以降、“ある変化“が起きていたといいます。男と同じ職場で働く同僚ら複数の人間は…。

 逮捕された男の知人:「いとこ(29歳の男)にFX(外国為替の取引)を勧められて。『絶対もうかるらしい』と言っていた。『どこかの大学の教授もそう言っているらしい』、と言っていた。これで金がたまるようになると話していた」

 「いい“もうけ話“があると話していた、そんな、うまい話があるわけないでしょ、といっていたがその後、このような事態になってしまった」

 急に、金に執着するような話をし始めたという23歳の男。さらに…。

 逮捕された男の知人:「ここ最近になって金に関して太っ腹になり、おごるやつじゃないのに『飯おごるよ』とか言ったりしていた」

 複数の関係者によると、佐々木さんの自宅からは、通帳や印鑑などがなくなっていました。窃盗容疑で逮捕された1人は調べに「お金がなくて犯行に及んだ」と供述しています。

 警察は引き続き、窃盗の疑いで逮捕された男3人と、死体遺棄事件との関連を慎重に調べています。