カタール断交の影響警戒=長期化に備え対応模索―日本企業

中東のカタールをめぐる断交問題に、日本企業が警戒を強めている。同国は日本が大量のエネルギーを輸入している重要な貿易相手国だ。断交長期化は人の移動や物流に悪影響を及ぼしかねず、対応策を模索する動きも出てきた。

 サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などは5日以降、テロを支援しているとしてカタールとの断交を相次いで発表した。

 カタールは世界有数の石油・天然ガス産出国だ。日本は原油の9%、火力発電などで使う液化天然ガス(LNG)の13%をカタールから輸入している。進出企業が手掛けるビジネスもエネルギー関連が多い。外務省の統計によると、2015年10月時点で日系企業の拠点は46カ所ある。

 前触れなく発表された今回の断交措置は、「寝耳に水」(日本の通商関係者)。「今の時点で大きな影響はない」(大手商社)とする企業が大半だが、不安は隠せない。

 1996年からカタール産LNGを電力会社などに販売している丸紅は、UAEのドバイにある中東統括拠点との往来に影響が出る可能性を指摘する。広報担当者は「カタールは我々にとって重要な国。今は情報収集するしかない」と話す。

 中部電力との共同出資会社を通じ、世界最大規模のLNGを調達している東京電力フュエル&パワーの佐野敏弘社長は、「(断交が)長期化すれば、スポット(価格)などで影響が出てくる可能性がある」とし、調達先の多様化が必要との認識を示す。

 カタールは22年のサッカー・ワールドカップ開催国でもある。さまざまなインフラ計画が進行中で、大林組は「ホテルなどが入る複合施設を建設しているが、状況を注視している」と指摘する。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、ドバイの経済特区をカタールへの在庫拠点として利用する日本企業などからは、取引の流れの見直しを検討するとの声もある。米倉大輔中東アフリカ課課長代理は、「人の移動などで影響は出始めており、長期化すれば資材がカタールに持ち込めないなどの事態も懸念される」と話している。