バイク車検ミスで一部やり直しへ ハイビーム光度が不十分の恐れ

国の依頼で車検を実施している独立行政法人「自動車技術総合機構(自動車機構)」(本部・東京都新宿区、柳川久治理事長)が長野、北見(北海道)、神奈川、静岡の4事務所で実施した二輪自動車(バイク)の車検で前照灯の光度判定の設定を誤り、一部で車検不適合のまま合格とした恐れがあるとして19日までに車検受検者に確認検査(再検査)を要請する通知を出しました。

車検の一部やり直しという異例の事態で、関係の車検通過車両は4万5000台以上に上る見込み。自動車機構は「ただちに安全が損なわれるものではない」としているものの、夜間に前方の障害物が確認しづらくなる恐れがあるとして対策を急いでいます。

対象となる台数は不明

 車検不適合車が含まれる恐れのある受検車両は長野事務所で7100台、北見事務所で900台、神奈川事務所は3万700台、静岡事務所で6600台と、4事務所合わせて4万5300台。同機構はこのほとんどに対し確認検査を通知しました。

 確認検査の対象となる期間はいずれも2014(平成26)年1月以降の車検で、▽長野事務所の場合は2016年3月までに受検した車両、▽北見事務所は2015年4月までの受検車両、▽神奈川事務所と静岡事務所は2015年6月までの受検車両――となっています。

 再検査が必要なバイクは、受検した車両のうち「前照灯が2灯式のバイク」で、「ハイビーム切り替え時に、ハイビームとして2灯とも点灯する構造のもの」。対象車両が何台あるかは不明。再検査となる確認検査ではハイビームの最高光度をもう一度調べます。

 同機構企画課の説明だと、光度判定の誤りは検査機器の設定不備によるもので「1万5000カンデラの基準で判定すべきところを1万2000カンデラで測定してしまったため」としています。このため光度不十分のまま検査を通った車両が走っている恐れがあります。

 判定ミスの影響について同機構は「誤判定があってもただちに安全が損なわれるものではないが、夜間にハイビーム点灯時に前方の障害物が確認しづらくなる恐れがある」としています。誤判定は光度に限られ、「光軸については適正な判定値だった」。判定を誤った原因について同機構は「人為的な問題か、機器の問題か現在調査中」と説明しています。

車検で「神経使う」光量の調整

 バイクは、排気量250CCを超える車体から車検が必要。新車では3年で車検を受け、その後は2年ごとになります。検査項目は前照灯の光軸や光量、ウインカーやブレーキランプ、警笛、スピードメーターの作動状態、ブレーキパッドの残量、タイヤの減り具合などのほか、騒音規制を超える音を出すマフラーや、車体の寸法を超える大きな部品の取り付けなど違法改造もチェックします。

 バイクの車検では前照灯の光の方向を規定通りに定める光軸の検査や光量のチェックは細かい調整が求められ、バイクの所有者が自分で車検を受けるユーザー車検では1回のチェックでは通らないこともあります。

 今回の光量判定のミスに関連して長野市内や松本地方のバイク店の経営者は「特に中古のバイクではバッテリーの劣化や、光の反射面のくすみなどで規定の光量が出ずに苦労することがある」と共通して指摘しています。そうした神経を使う調整だけに、設定ミスによる誤判定に驚きを隠しません。

 また、「ただちには安全は損なわれない」という自動車機構の判断について、排気量1000CCの旧型の大型バイクに乗る長野市の男性は、「晴天の夜の走行ならそれほど気にはならないだろうが、夜の雨の走行では前照灯の光が闇に吸い込まれて不安が募る。そういう状態でたとえ少しでも光量が不足していたら、安全とは言い切れないだろう」と、自身の体験から指摘しています。

自動車機構、自らの不備認める

 光度判定の設定ミスについて自動車機構は「これまでになかったこと」と、初めてのトラブルだとして原因究明や対策に乗り出し、「今回の問題は自動車機構の不備であり、(バイクを車検に出した)整備事業者の問題ではない」と自身の責任を認めています。また、関係のユーザーに対し「すでに車両を売却などした場合や、確認検査の対象ではない車両の場合は、確認検査の専用予約窓口に連絡をいただきたい」などとしています。

 同機構は昨年(2016年)4月に自動車検査独立行政法人と独立行政法人交通安全環境研究所を統合して発足。全国93カ所に事務所を置き、298基の検査コースを設けて車検業務などを実施。交通安全環境研究所などの関連機関も置いています。国交省や輸送機器メーカーのOBらが理事を構成しています。