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海のゴミ「アカモク」が、ヒット商品になろうとしている背景

海のゴミ「アカモク」が、ヒット商品になろうとしている背景

援助交際の温床だと言われる「出会い系バー」に、6年前から足繁く通って、時に若い女性たちを連れ出してお小遣いをあげていたというので、誰もが「そういう趣味のおじさん」だと思っていたら、実は「女性の貧困」の現状をこの目で見るため、長きにわたって自腹で「潜入調査」を続けていた“正義”の文科官僚だった――。

そんなウソみたいな話が現実にあったように、世の中にはロクでもないものだと思われていたものが、実は多くの人々を救う立派なものだった、なんてことがちょいちょいある。

 海の世界でいえば、「アカモク」がそれにあたる。

 といっても、「は? なんだよそれ?」という人がほとんどかもしれない。アカモクとは北海道東部を除いて日本全国に生息する海藻なのだが、食用にしているのは秋田と石川の一部地域のみ。全国の漁業関係者のほとんどから「ゴミ」扱いされてきて、せいぜい畑の肥料にされるというのが関の山だったからだ。

 パッと見は細い春菊のようなビジュアルのこの海藻は、ある時は漁船のモーターにからまり、ある時は刺し網やカキの養殖施設にからみつく「流れ藻」として、海の男たちから嫌われてきた。ノリの養殖業者にとって品質を落とす「天敵」としても知られている。

 アカモクがいかに嫌われてきたかというのは、地元の呼称からもうかがえる。宮城県では「ジャマモク」や「バツモ」(×の藻)。三重県では「クソタレモク」と、正義の官僚へ向けられた「人格攻撃」をほうふつするかのように、盛大にディスられてきたのである。

 しかし、そんな「海のゴミ」が驚くなかれ、実は多くの人々を救う「スーパー海藻」ではないかと再評価され始めているのだ。

●アカモクの普及に時間がかかった原因

 きっかけは、1998年に富山大学の林利光教授が日本薬学学会で発表した画期的な研究だった。アカモクのエキスが、試験管内でエイズウイルスや単純ヘルペスウイルスの増殖を抑えていることが確認されたのだ。マスコミも「エイズ抑える海藻」(毎日新聞 1998年4月2日)と大きく報じた。

 この研究に触発され、全国の大学や研究機関で、アカモクの成分に対する研究が活発化。俗に免疫力や肝機能を高めるというフコイダンや、抗腫瘍効果や脂肪燃焼効果があるというフコキサンチンが、ワカメやメカブなどと比べて圧倒的に多いことなども判明している。10年ほど前から一部スーパーや通販で流通し始めてシニアや健康志向の方たちの間でクチコミで人気が広まっているのだ。

 最近では、和食チェーン「大戸屋」が「アカモク小鉢」や「アカモク雑炊」を提供している。2017年3月にはNHKの『あさイチ』で花粉症の症状をやわらげる「スーパーフード」として紹介されたことが大きな話題になるなど、ブームの兆しが訪れているのだ。

 そう聞くと、「20年くらい前から注目されていたというけど、『アカモク』なんて海藻があることすらまったく知らなかったぞ」と不思議に思う方も多いだろうが、これには理由がある。

 「エイズ抑える海藻」報道のあった1998年より、アカモクの商品化に着手し、普及活動を続けて現在のブームの土台をつくったパイオニア的な存在である岩手アカモク生産共同組合の高橋清隆代表は言う。

 「人間って知らないものを食べてみようとは思わないじゃないですか」

 どんなに体にいいものだと言われても、これまで「ゴミ」として扱ってきたようなものを口に入れるのは抵抗がある。そのような心のハードルが一般消費者はもちろん、漁業関係者側や流通側にも存在し、知名度が上がることを阻(はば)んでいたのだ。

 確かに、高橋代表らがこの20年間やってきたことは、アカモクの普及というよりも、アカモクに対する「心のハードルを取っ払う作業」と呼んだほうがしっくりくる。

●アカモク商品化の道のり

 海藻の卸問屋をしていた高橋代表の父がアカモクに目をつけたのは偶然だった。岩手県の山田湾でいつものようにゴミとして捨てられていたアカモクを積み込む秋田ナンバーの軽トラックをふと目についたのである。

 「当時、大手スーパーのPB(プライベートブランド)に中国産ワカメなどが使われ始めて、国産海藻を扱う我々は大きな打撃を受けていました。新たなビジネスアイデアを探していた父は、アカモクを何に使うのかなあと思い、軽トラックの後をつけたんですよ。すると、どうも秋田ではアカモクを『ギバサ』と呼んで食べていることが分かってきました。だったらこれを売ってみてはどうか? とひらめきました」(高橋代表)

 偶然はさらに続く。タイミングよく先ほど紹介した「エイズ抑える海藻」という発表があったのだ。ずっとゴミだと思っていたものが「宝の山」に代わった瞬間である。

 しかし、アカモクの商品化の道のりは想像以上に厳しかった。というのも、実はアカモクと外見はソックリだが、食べてみるとまったく味が違う海藻があるのだ。

 「もともとゴミ扱いしていたのでプロの漁師さんも2つの海藻を見極めることができません。自分たちで採っては食べて、それぞれの特徴を見極めていくしかない。そんな「目利き」の技術を習得するのに思いのほか時間がかかって、製品として安定供給できる体制をつくるまで2年半もかかってしまいました。それから地元のスーパーに売り込みをかけて、どうにか置いてもらうことになったのですが、まったく売れませんでした」(高橋代表)

 その理由こそが先ほど触れた「心のハードル」である。「とにかくすごく栄養があって、秋田の人は食べてるんですよ」と呼びかけても、岩手の人からすれば「得体の知れない海藻」に過ぎない。その「不安」のほうが好奇心より勝ってしまったのだ。

●「オシャレなレストラン」に狙いを定めた

 ひたすら開発に心血を注いできたアカモクがなかなか売れない――。そんな状況が続き、岩手アカモク生産協同組合の年商は「200万円」とピンチに追い込まれたが、高橋代表はこの「得体の知れない海藻」というのを逆手にとって、起死回生の策を思いつく。

 「新しい食材に抵抗が少ない東京のオシャレなレストランならば、ユニークなメニューとして使ってもらえるのではないかと考えました。幸い目利きの技術を習得するため、アカモクのいろいろな食べ方を試しましたので、レシピも合わせて提案したんです」(高橋代表)

 狙いは当たった。アカモクはさまざまな店で独自メニューを彩るユニークな食材として重宝され始めたのだ。ほどなくして、地元・岩手のスーパーでもちょこちょこと売れ始める。「都会のレストランで使われるユニークな新食材」といううたい文句で「逆輸入」に成功したのである。

 この見事なアカモクPRが成功したのは、高橋代表が「オシャレなレストラン」に狙いを定めたことが大きい。

 「ワカメやコンブって基本的に和食の食材で、洋食ではせいぜいサラダくらい。そういう先入観のある店では広がらないと思ったんです。売り込みをした2005年ごろはちょうどいろいろ個性的なお店ができて、オリジナリティのあるメニューの開発に力を入れるシェフが多くいました。彼らは「アカモク=海藻」というイメージもないので、『モロヘイヤのような粘り気にシャキシャキとした食感』『オリーブオイルと相性がいい』など純粋に食材として評価してもらうことができました」(高橋代表)

 その後、さらなる普及を展開するため高橋代表は、全国の漁業関係者にアカモクの目利き技術を広めた。ゴミが金になるということを知って、自分たちと同じように生産に乗り出してくれば、「得体の知れない海藻」ではなくなる。心のハードルが取り払われることで世の中に食材として認知され、市場が活性化すると考えたのだ。事実、中部国際空港セントレアでは、護岸に生えて近隣のノリ養殖業者の悩みの種だったアカモクを高橋代表が協力をして「特産品」として売り出すことに成功している。

 こうした地道な活動が功を奏して、3月の『あさイチ』の放送につながっていったというわけである。

●アカモクは「救いの神」になるのか

 そんなアカモクのサクセスストーリーの中でもう1つ忘れてはいけないことがある。漁業関係者の心のハードルが下がってきたのが、単に「ゴミが金になるから」だけではないという点だ。アカモクを25年以上研究し、高橋代表とともに各地で普及に務めてきたNPO法人環境生態工学研究所の佐々木久雄理事は言う。

 「実はアカモクはモズクと異なり、赤潮防止など環境や生態系保全に役立つ海中林を形成する。漁獲量が減ったりして疲弊する漁業関係者にとってアカモクは環境にもいいし副収入になるという1粒で2度おいしい水産資源ということで、役所もバックアップしてくれた」

 つまり、長いこと漁業関係者から忌み嫌われていた「ゴミ」は、日本人の健康に資する自然食品だっただけではなく、実は赤潮を防ぎ漁場の環境を整えてくれていた「守り神」のような存在だったというわけだ。

 全国各地のアカモクがどう扱われているかを調査した佐々木氏によると、実はアカモクは古来から「神馬藻(じんばそう)」と呼ばれ、日本全国を馬で旅を続けた神様を元気づけた海藻という伝承が残っているそうだ。また、実った稲穂に姿が似ているということで、地域によってはアカモクは「縁起物」としてお正月のしめ飾りや、神社のしめ縄にも使われている。

 要するに、「ゴミ」にしたのは後世の人間で、もともとは「神様の食べ物」だったというわけだ。

 四方を海に囲まれた日本にとって、漁場の環境整備は大きな問題であることは言うまでもない。一方で、少子高齢化で医療費がパンクしているこの国で、バランスのとれた食生活で健康寿命を少しでも伸ばしていくというのも喫緊の課題である。

 今はまだ「ゴミ」扱いされることも多いこの海藻が近い将来、日本の「救いの神」になるかもしれない、というのは考えすぎか。

「明治 エッセルスーパーカップ」が売れている、控え目な理由

「明治 エッセルスーパーカップ」が売れている、控え目な理由

アイス市場が熱くて溶けてしまうかもしれない――。このように感じるほど、業界が盛り上がっていることをご存じだろうか。日本アイスクリーム協会によると、2015年の販売金額は4647億円。10年ほど前から、右肩上がりで伸び続けているのだ。

「ふむふむ、分かる分かる。オレは『ガリガリ君』をよく食べるからなあ」「いやいや、ワタシは『ピノ』が大好き」といった声が聞こえてきそうである。スーパーやコンビニの冷蔵ケースの中をみると、定番商品がズラリと並んでいる中で、必ずと言っていいほど目にするモノがある。「明治 エッセルスーパーカップ」(130円、税別)だ。

 1994年に発売したところ、翌年にはカップアイス市場でトップの座に(ハーゲンダッツを除く)。ライバルがひしめき合う中で、なぜエッセルスーパーカップは消費者に支持されたのか。最大の理由はボリュームである。

 当時、カップアイスの主流は、150mlで100円。そうした常識を打ち破るために、明治は「200mlで100円」という価格設定で勝負したところ、「アイスをたくさん食べたい」という若年層の胃袋をつかんだ。その後も好調に推移し、全ジャンルの中で「エッセルスーパーカップ」(約220億円)が売り上げトップに。2位「ガリガリ君」(約145億円)を大きく引き離しているのだ(アイスクリームプレス調べ)。

 このように書くと「他の商品のようにいろんな手を打ってきたのだろうなあ」と思われたかもしれない。例えば、奇をてらったフレーバーを展開したり、SNS上でいろいろ仕掛けたり。しかし、エッセルスーパーカップは違う。過去のフレーバーをみると、「クッキーバニラ」「チョコミント」など、他の商品でもあるようなモノばかり。SNSにいたっては、TwitterやFacebookで公式サイトを運営していない。

 それでも、1位である。なぜか。その秘密を探るために、同社でマーケティングを担当している松野友彦さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

●エッセルスーパーカップの武器

土肥: エッセルスーパーカップの最大の武器は、やはりボリュームだと思うんですよね。発売当時(1994年)、カップアイスの主流は150mlで100円だったのに対し、エッセルスーパーカップは200mlを100円で販売した。なぜこのような価格で販売することができるのかなあと思って調べたところ、植物性脂肪を使うことで低コストを実現できたんですよね。

 アイスクリームって同じように見えても、乳成分の量によって4つの種類に分けられる。エッセルスーパーカップはアイスクリーム(乳固形分15.0%以上、うち乳脂肪分8.0%以上)ではなくて、乳脂肪が少ない「ラクトアイス」。濃厚な味わいを楽しむためには、乳脂肪が多いほうがいい。でも、コストが高くなる。そこで、乳脂肪に比べて価格が安い植物性脂肪を使うことで「量が多いのに、あっさり食べられる」商品を開発することに。当時、どのような反響があったのでしょうか?

松野: カップアイスは競合商品が多かったので、スーパーやコンビニなどですぐに置いてもらうことができませんでした。ただ、とあるコンビニで販売してもらったところ、ものすごく売れまして。その後、どんどん広がっていき、取扱店が増えていきました。商品は94年に発売したのですが、翌年にはカップアイス市場でシェアトップになりました。

土肥: アイスの売り場面積って、ものすごく狭いですよね。いくつかのコンビニを調査したところ、「ガリガリ君」「パルム」「ピノ」「パピコ」「チョコモナカジャンボ」など、いわゆる定番商品ばかり並んでいました。新商品が入っていく隙間はほとんどない状況の中で、エッセルスーパーカップは発売後、たった1年でトップに。このような商品は、珍しいのではないでしょうか。

松野: 各社、毎年のように新商品を出していますが、なかなか生き残るのは難しい。半期で終わる商品もありますし、売れてもすぐに落ち着いてしまう商品もあります。ご指摘のとおり、すぐにトップになるのは難しい。ただ、たった1年でも変わるときには変わるんですよ。

土肥: 1年でも変わるときには変わる? 変わられたことがあるのでしょうか?

松野: 実は……あるんです。エッセルスーパーカップは95年からトップを走っていたのですが、99年に他社から新商品が出てきまして。翌年、その商品がカップ市場で1位になるんですよね。

土肥: 5年ほど1位を走っていたのに、2位に転落したわけですね。社内はどのような状況だったのでしょうか?

●基本的に「味」には手をつけなかった

松野: 大変な騒動になりました。社内からはこのような声がありました。「リニューアルすべきではないか」「スペックを見直すべきではないか」「フレーバー展開をどんどんすべきではないか」と。さまざまな意見が出たのですが、味には手をつけなかったんですよね。

土肥: それはなぜ?

松野: さまざまな調査を行ったのですが、見直すポイントがないほど、高評価だったんです。「この部分はちょっとマイナスだから見直したほうがいいのでは?」といった声もありましたが、それも“あら探し”をしたような点でした。ということもあって、味には手をつけませんでした。

土肥: 企業というのはちょっと業績が悪くなると、すぐに“変えよう”としますよね。組織であったり、人事であったり。エッセルスーパーカップの場合であれば、味を変えてもおかしくなかった。というのも、2位に落ちて、さらに売り上げが落ちていくと、「だから、味を見直そうと言ったじゃないかっ!」といった声が必ず出てくる。でも、あえてそれをしなかった。

松野: はい。その後も、「濃厚だけれども、後味はスッキリしている」という方向性は変えずに、少しずつ微調整していきました。でも、それだけでは売り上げを回復するのは難しかったかもしれません。そこで、パッケージにシズル感を出すようにしたり、お客さまとのコミュニケーションを増やしたりすることで、2003年ころから少しずつ回復していきました。2004年に再びトップに立ち、その後、ずーっと1位でして。

土肥: うーん、なにか隠していませんか? アイスメーカー各社の取り組みをみていると、あれこれやっているんですよね。消費者をあきさせないように、毎年ちょっと変わったフレーバーを出したり、SNS上でグループをつくってファンを増やすようなことをやったり。でもエッセルスーパーカップは、あまりそうしたことにチカラを入れているように見えないんですよね。フレーバーを見ても……。

松野: 定番の「超バニラ」「チョコクッキー」「抹茶」のほかに、期間限定の商品を出しています。ちなみに、人気があるのは「クッキーバニラ」と「チョコミント」。

土肥: ほら、期間限定で「クッキーバニラ」ってちょっとおかしくないですか。季節感がどこにもない(笑)。フレーバー展開にチカラを入れていないとは言いませんが、他社と比べて派手さがないというか、控え目というか……(失礼)。

●ブランドを守ることに注力してきた

松野: 言われてみると、確かに「クッキーバニラ」に季節感はないかもしれません(笑)。あと、他社と比べて派手さがないということですが、それは「ブランドを守り続けているから」だと思うんですよね。では、商品のブランドとは何か。「安心感」なんです。

土肥: 安心感? どういう意味でしょうか?

松野: ちょっと変わったフレーバーを出して、お客さまに驚いてもらう。そうしたことはやろうと思えばできたかもしれません。でも、やらなかった。なぜなら、お客さまがそれを望んでこなかったからなんですよね。先ほどもご紹介したとおり、アンケート結果で味について不満を感じている人はほとんどいなかった。2位に転落したときに、味を大幅に変えていたら、その後、毎年のように奇をてらったようなフレーバーを出し続けていたかもしれません。

土肥: 94年に発売してから、基本的なレシピは変えていない?

松野: はい。また、話題づくりのために、何かをやろうと思えばできたかもしれません。でも、あまりやらなかった。なぜかというとフレーバーと同じように、ブランドを守るためでもあるんですよね。

 2004年、カップアイス市場でエッセルスーパーカップはトップに返り咲いてから、いまもその座にいます。でも、守り続けることは難しい。いまトップでも、入れ替わるときにはすぐに入れ替わる。なぜこのような不安を感じているのかというと、アイスの売り上げは年々伸びているので、各社チカラを入れているんですよね。

 新商品がヒットすれば、横展開できるかもしれない。そうなると、売り場面積が狭いので、すぐに太刀打ちできない状況になるんです。このような危機感があるので、ブランドを守りながら攻めるときには攻めなければいけない。そうでなければ、トップブランドで居続けることは難しいかなあと。

土肥: 「攻めるときには攻めなければいけない」ということですが、どのように攻めているのでしょうか?

●「Sweet's 苺ショートケーキ」が大ヒット

松野: 例えば、2016年に「Sweet's 苺ショートケーキ」(以下、ショートケーキ)を発売しました。カスタード風味のアイスとホイップクリーム風アイスの間にクッキーをはさみ込み、さらにイチゴの果肉が入ったソースで上部を覆いました。

 エッセルスーパーカップのブランドで、4層構造の商品を発売したのは初めて。容量172mlに対し、価格は220円(税別)。ちょっと高いかなあ、大丈夫かなあと思ったのですが、ものすごく売れました。約4カ月間(12月〜3月)の売上目標を、わずか1カ月弱で達成することができました。

土肥: おー。

松野: この商品を発売して、新たな発見がありました。ここ数年、コンビニは高価格のアイスを発売しているので、ショートケーキはある程度売れるかなあと予想していました。ただ、スーパーは違う。低価格のアイスをたくさん扱っているので、ちょっと苦戦するかなあと考えていたのですが、現場の方から「おもしろい」「食べたくなる」といった声があったので、「いけるかも!」と思いました。実際、ものすごく売れたので、びっくりしました。

土肥: なぜ売れたと分析していますか?

松野: エッセルスーパーカップが消費者にとって身近な存在になっていたからではないでしょうか。コンビニでのカバー率は90%以上なので、お店に行けばほぼ置いている。そうしたブランドから新しい商品が出てきたので、「おっ、これはなんだ? ちょっと買ってみよう」と感じた人が多かったのではないでしょうか。

土肥: それほど高いカバー率であれば、もっと早く出していればよかったのでは?

松野: いや、早く出していれば、これほど売れなかったかもしれません。どういうことかというと、コンビニのアイス売り場で、価格の垣根がなくなってきたからなんです。数年前までは、130円の商品がたくさん並んでいましたが、いまは違う。いろんな価格帯の商品が並んでいるので、お客さまも「220円」という価格に抵抗を感じる人が少なくなってきたのではないでしょうか。

土肥: なぜエッセルスーパーカップはトップでいるのか。おさらいすると、当時の常識では考えられなかった、ボリュームと価格で打ち出した。ライバルが登場して、2位に転落するものの、そこで慌てずに動かなかった。なぜ動かなかったかというと、アンケート調査で味に対する不満の声がほとんどなかったから。その後、味を微修正するものの、基本的な方向性は変えずにここまでやってきた。他社が派手な取り組みをしていても、ブランドを守りながら攻めるときには攻めてきた……というわけですね。

松野: はい。

土肥: 最後の質問です。

●チョコミント、大阪で苦戦

土肥: 期間限定のフレーバーで「チョコミント」を扱っていましたが、これ大阪で売れましたか? すみません、ヘンな質問で。というのも、他社でもチョコミントのアイスを出していて、その担当者が「なぜか大阪で売れなくて、困っているんですよ」と言っていました。

 大阪で生まれ育ったワタシも、チョコミントが大の苦手なんですよね。なんだか歯磨き粉を食べているような気がして(ファンのみなさま、すみません)。

松野: 実は……エッセルスーパーカップでも大阪での販売状況があまりよくないんですよね。試食をお願いしても「いらん」といった声がたくさんありました。なぜ売れないのか、理由はよく分かりません。ただ、以前に比べ売り上げは少しずつ伸びてきているので、若い女性を中心に抵抗なく食べる人が増えてきているのではないでしょうか。

土肥: うーん、納豆のような話ですかね。その昔、大阪のスーパーで納豆を売っている店は少なかった。ただ、食べ慣れてくる人が増えてくると、売り上げも伸びていった。チョコミントも同じようなカーブを描くかもしれないですね。や、ちょっと話がそれました。本日はありがとうございました。

カップ入り「だし汁」が人気=コーヒー代わり、美容効果も

カップ入り「だし汁」が人気=コーヒー代わり、美容効果も

肉や野菜を素材にしたカップ入りの「だし汁」を、コーヒーなどのドリンク代わりに楽しむ人が増えている。美容効果も期待できるタンパク質やカルシウムなどを手軽に摂取できるとあって、健康志向の強い30〜40代の女性らを中心に人気が高まっているようだ。

 東京都内を中心に店舗を持つコンビニエンスストアのナチュラルローソンは先月23日、全店で「ブロススープ カップ」(324円)を発売した。子牛の骨からだしを取った「ボーン」と、ニンジンやタマネギなど5種類の野菜を使った「ベジタブル」の2商品があり、テスト販売での好調を受けて本格展開に踏み切った。

 カップ入りのだし汁は、カフェインレス飲料として米ニューヨークでも人気があるといい、同社担当者は「手軽に栄養が取れてカロリーも低い。コーヒー代わりに楽しんでほしい」とアピールする。

 また、かつお節メーカーのにんべん(東京都)は、だし汁を手軽に楽しめるバー形式の「日本橋だし場」を2010年から国内外に5店舗開設。かつお節のみと、昆布を混ぜた2種類(レギュラーサイズで各1杯100円)を販売しており、今年3月末までに東京・日本橋の本店だけで累計77万杯が売れたという。
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