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人手不足

企業の人手不足、49.1%が正社員不足 「求人難」型の倒産が前年比2.2倍に増加

企業の人手不足、49.1%が正社員不足 「求人難」型の倒産が前年比2.2倍に増加

企業の人手不足が深刻化している。求人難を原因とした倒産が増加しており、景気回復に水を差す恐れもありそうだ。

帝国データバンクは全国の企業2万3,235社を対象に人手不足に対する企業の動向調査を実施し、その結果を11月22日に発表した。調査期間は10月18日から31日で、有効回答企業数は1万214社。
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企業の人手不足

現在の正社員の過不足状況を聞くと、49.1%(該当なし・無回答を除く 以下同じ)の企業が「不足」していると回答し、3カ月前の7月調査時より3.7 ポイント増加、1年前の調査時より7.3 ポイント増加した。「適正」は42.7%、「過剰」は8.2%だった。

業種別に「不足」と回答した企業を見ると、ソフト受託開発などの「情報サービス」が70.9%で最も高く、以下、「メンテナンス・警備・検査」(64.3%)、「運輸・倉庫」(63.7%)、「建設」(63.5%)などが続いた。企業の規模別では「大企業」が56.4%で3カ月前から4.6ポイント増加、「中小企業」が47.2%で同3.5ポイント増加、中小企業のうち「小規模企業」は42.2%で同3.4ポイント増加した。

非正社員の過不足状況を聞くと、「不足」が31.9%で、3カ月前より2.5ポイント増加、1年前より4.7ポイント増加した。「適正」は61.7%で、「過剰」は6.4%だった。業種別に「不足」と回答した企業をみると、「飲食店」が80.5%で最も高く、以下、「飲食料品小売」(60.9%)、「人材派遣・紹介」(59.1%)、「メンテナンス・警備・検査」(55.2%)が続いた。企業の規模別にみると「大企業」が34.3%、「中小企業」が31.3%、中小企業のうち「小規模企業」が29.6%となった。

一方、東京商工リサーチは11月9日、10月の「人手不足関連倒産」について発表した。それによると、10月に発生した人手不足関連倒産は39件で前年同月の22件を上回り、調査を開始した2013年以降で最多件数を記録した。それまでの最高は2015年6月の38件だった。内訳をみると、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」型が29件(前年同月17件)、中核社員の独立・転職で事業継続に支障が生じた「従業員退職」型が5件(同1件)、人材確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型が4件(同3件)、賃金等の人件費のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型が1件(同1件)だった。

また、1月から10月までの累計では、人手不足関連倒産が269件(前年同期270件)発生し、倒産件数が全体的に減少する中、ほぼ前年並みで推移している。また、「求人難」型の倒産は前年同期比121.4%増の31件(同14件)で、大幅に増加した。

企業の人手不足感が一段と増している中、求人難による倒産件数が増加しており、今後の動向が注目される。

「一蘭」摘発で業界の悲鳴…人気ラーメン店も外国人頼み

「一蘭」摘発で業界の悲鳴…人気ラーメン店も外国人頼み

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飲食店の人手不足問題

人気とんこつラーメン店「一蘭」が11月29日、大阪府警に“ガサ入れ”され、飲食業界関係者は戦々恐々だ。一蘭といえば、一人一人仕切られた「味集中カウンター」で知られる。

「きっかけは、一蘭の道頓堀店別館(大阪市中央区)でアルバイトをしていたベトナム人の女(29)です。5月に警察官から職務質問を受け、不法就労が発覚しました」(捜査事情通)

女は29日までに、入管難民法違反容疑で逮捕され、一蘭も同日、必要な届け出を怠っていた雇用対策法違反の疑いで福岡市博多区の本社などを家宅捜索された。一蘭は「事実関係を確認中でコメントできません」(広報担当者)としているが、急拡大のツケと見る向きもある。

「1993年の設立から年商も店舗数も右肩上がりで、13年度に100億円を突破し、16年度は174億円。10月時点で国内69店舗、海外4店舗という一大チェーンに成長しました。昨年10月には米NYに出店し、日本円で1杯2000円という価格でも話題に。有名ラーメン店の中でもインバウンド人気が高いですね」(調査会社関係者)

1月時点で社員数295人、アルバイト数5368人という大所帯だ。急拡大のひずみが生じても、不思議じゃない。

「逮捕されたベトナム人の女が働いていた道頓堀店別館では、アルバイトの基本時給が1200円以上、早朝1300円、深夜なら1500円で募集をかけている。それでも人が集まらない、人手が足りないから、外国人に頼らざるを得なかったのでしょう。飲食業界は外国人労働者抜きに回らない。一蘭に限らず、いずこも同じです」(外食チェーン関係者)

一蘭の吉冨学社長は、HPで「人間教育に力を入れ、コンプライアンスを重視」などと語っているが、そうも言っていられない店は多い。

「一蘭の“摘発”は一罰百戒の意味もあるのでしょうが、外国人労働者に対する締め付けが厳しくなって人手不足が加速すれば、これまで以上に人件費が高騰する。そのぶん材料費を削れば、客足が遠のく。立ち行かなくなる飲食店が激増する恐れがあります」(経済ジャーナリスト・岩波拓哉氏)

飲食業界全体にひずみが生じている。

「転職先は辞めた会社」出戻り社員が増えている切実な理由

「転職先は辞めた会社」出戻り社員が増えている切実な理由

一度、辞めた社員を企業が再び雇用する「出戻り」を認める風潮が高まっている。その象徴の一つが、日本マイクロソフト会長だった樋口泰行氏のパナソニック経営層への“出戻り”だ。

新卒採用、年功序列、終身雇用の3点セットが前提の会社では、一度辞めれば「二度と敷居をまたげない」という企業文化も珍しくはなかったが、意識は確実に変わりつつある。

採用支援サービスのエン・ジャパン東海関西営業部の営業マネージャー田中雅基さん(36)は、5年半ぶりに戻ってきた会社の朝礼で、感極まって泣きだしてしまった。

「正直、あまり歓迎されていないと思っていました。それが想定と違って、あまりにもみなさんが温かくて」

「いつでも戻って来たらいい」と、復職に際し、社長面談でも言われていた。とはいえ、一度飛び出した会社で「出戻り社員」として働くには、田中さん自身、複雑だった。「一時的な感情で飛び出して、迷惑をかけた」との思いがあったからだ。

会社を辞めようと思ったきっかけは、27歳での結婚。

「改めて人生について考えた時に、30歳までには経営をやろうと思って入社したことを思い出したんです。今の自分はちょっと違うなと」

田中さんは当時、東海関西地区の営業担当で、中小企業の中途採用支援が主な仕事だった。営業スタイルの改革を会社に提案するが「取り合ってもらえない」という「今思えば若気の至り」の不満もあった。

ベンチャー転職は甘くなかった 人手不足

転職先に選んだのは、顧客である設立1年のベンチャー企業。年収は下がるし、結婚相手にも驚かれたが、踏み切った。しかし、創業したてのベンチャーへの転職は、そう甘いものではなかった。

チーフで入ったものの、1年で肩書きはなくなり、23歳の新入社員の女性の下で働くことになる。大きな組織での仕事と、何から何までやらなくてはならないベンチャーでは、あまりに勝手が違っていた。

とにかく必死で働いた。営業経験を生かし新規サービスを軌道に乗せ、転職3年目には役員に昇格。ただ、社員の退職が相次ぎ負担は多くなる一方、業績連動型の報酬は下降し続けた。

マンションをローンで購入し、2人の子どもが生まれていた田中さんは、次の仕事を考えざるを得なかった。転職から5年が過ぎていた。

「次は家族で夕飯を食べられる、安定した会社にして」

さんざん心配をかけてきた妻の望む転職をしようと、転勤のない安定企業でなんとか内定をつかむ。

だが、ほっとしたものの、なぜか心が踊らない。

そんなころ、退社してからも、ずっと付き合いを続けていたエン・ジャパン同期入社グループのLINEが鳴った。

「戻ってくればいい。一緒にやろう」。

インフルエンサーになりやすい 人手不足

「もともと縁があって一緒に働いた仲間なのだから、門戸を閉ざす理由はありません」

エン・ジャパン人財戦略室マネージャーの豊田雄大さんは、出戻り社員についてそう言う。

同社は3年前から「Welcome back制度」を導入。育児や配偶者転勤といったライフイベントはもちろん、転職や起業などによる離職者も含め、年3人程度は“出戻り社員”を雇用している。年代は20代半ばから30代半ばの働き盛りだ。

豊田さんは、出戻り社員のメリットとして、以下を挙げる。

1. 理念への共感があり、即戦力になる
2. 他を見たからこそ、自社の良さに改めて気づくなど、ずっと同じ会社にいては見えないことが見えている。
3. そうしたことが周囲にも波及して、いい意味でインフルエンサーになりやすい

もちろん、無条件に受け入れているわけではない。

「他社での仕事をやりきったか、待遇への不満で揺れているだけではないかということは見ます」

東海関西営業部に田中さんが戻ってから3年近くが過ぎた。田中さんは11月、管理職のマネージャーに昇格した。中小企業の採用の難しさも身に沁みた“出戻り後”は、顧客とのアポイントや時間の大切さについて、若手と話すことも増えていた。

会社を飛び出した後の経験には苦いものもあり、一筋縄では行かなったが、今なら分かる。

「かつての自分は対人関係力にばかり頼り、数字でのコミュニケーションや論理的思考力が足りなかった。このストーリーでなければ、自分の弱点と向き合えなかった。自分には出戻りが財産です」

増える“辞め社員”の再雇用 人手不足

企業が離職者を再雇用する制度拡充の動きは相次いでいる。2015年にはサイバーエージェントの再雇用制度が話題になったほか、「ジョブ・リターン制度」などとして、ニトリ(2014年)、AOKI(2015年)、雪印メグミルク(2016年)など、複数企業が制度導入を公表。2000年代半ばにも、育児中の女性の支援策などとして、再雇用制度を設ける動きがみられたが、近年の特徴は「転職や留学などキャリアアップを認める」もしくは「理由を問わない」など、対象者を拡大していることだ。

エン・ジャパンが220社を対象にした出戻り社員実態調査2016でも、67%の企業が「再雇用したことがある」と回答。今後についても7割超は条件が整えば再雇用したいとしている。

その理由として目立つのが、人手不足による採用の難易度だ。

「慢性的な人材不足が続いているため」(物流関連・社員101〜300人)
「経験者採用が難しくなっているため」(流通・小売り関連501〜1000人)

「“出戻り社員”の採用は増えていると思いますよ。IT業界はもともと人も流動化しているので多いですが、ここ3年で伝統的な企業からも『話を聞かせてほしい』と連絡が来るようになりました」

ワークスアプリケーションズの人事総務バイスプレジデントの小島豪洋さんはいう。同社は12年前から「カムバック・パス制度」を導入。退職した社員に対し、一定の評価をクリアしていれば、再入社が認められる。特徴的なのは、退職理由を問わないこと、制度を使えば選考なしのフリーパスで戻れることだ。留学や起業、海外青年協力隊など、これまでに60人以上が退社しては再び戻っているという。

小島さん自身も一度、他社に出た制度利用者だ。

「かつての日本企業では、生涯面倒を見るつもりで採用しているので、出て行った社員は顔も見たくないという風潮もあったでしょう。ただ、採用市場は非常に厳しくなっている。(出戻り社員の活用は)優秀な人材を獲得するための一つの手法になりつつあるのではないでしょうか」

9月の有効求人倍率は1.52倍とバブル期超えを維持している。労働市場の需給が逼迫し、優秀な人材の争奪戦となる中、企業にとって離職者をめぐる考え方も、過渡期を迎えているようだ。

深刻な人手不足が招くバイトの過保護化と店長受難

深刻な人手不足が招くバイトの過保護化と店長受難

アルバイト・パートの求人倍率は1.80倍(2017年6月)に上り、求人数が求職者数を上回る「売り手市場」となっている。従業員にバイトが占める割合の高い飲食店やコンビニエンスストアなどでは、深刻な人手不足も問題だ。時給1500円でも応募がないというケースがある一方、せっかく採用したアルバイトがわずか1か月でやめてしまうということも珍しくない。人手不足にあえぐ現場で何が起きているのか。リクルートで主要求人媒体の全国統括編集長の経験がある人材コンサルタント、平賀充記氏に聞いた。

◆ホワイト化するバイト 深刻な人手不足

かつて、社会問題になっていた「ブラックバイト」という言葉は、ここ数年でほとんど耳にしなくなりました。そもそも、ブラックバイトは、長時間の残業を押し付けたり、やめたいという学生を不当につなぎとめたりすることが問題になっていました。

 バイト学生の良心や責任感につけこむ「やりがい搾取」という実態とともに、過重労働やバイト代の未払いにつながる悪質なケースも見受けられました。

 しかし、こうしたブラックバイトが問題視されるとともに、昨今の「働き方改革」ブームも手伝って、各業種で長時間労働などの見直しが行われるようになりました。

◆しわ寄せは店長へ 深刻な人手不足

その結果、飲食店などでは、職場の中で立場の弱いアルバイトスタッフに無理させない「過保護化」という動きが加速しました。バイトの労働は1日8時間まで、残業禁止、無理なシフトはご法度……。

 コンビニのように、売り上げがほぼ一定で、原材料費でコストカットするということができない場合、利益を伸ばすには人件費を削るしかありません。バイトの時給を一定程度まで引き上げた場合、次はバイトの数を抑制するようになります。それまで、3人のバイトで回していた時間帯でも2人でこなすということもあります。

 すると、現場では何が起こるでしょうか?

 バイトやパートからは、「もっと働きたい」という不満が出ます。そして、人員不足は残業代のない「みなし労働」の店長が補うことになります。

◆「こんなはずじゃなかった」 バイトの過保護化

「もっとバイト代を稼ぎたいのに、シフトに入れない」

 「オシャレなイメージのカフェだったのに、厨房の中が汚かった」

 「簡単な仕事と聞いていたのに、覚えなきゃいけないことが多かった」

 バイトがすぐにやめてしまう職場に多く見受けられるのが、「こんなはずじゃなかった」というリアリティーショックの数々です。

 「仕事をしながら慣れればいいと言われたのに、いきなり接客させられた」

 「教わってもいないレジ打ちにとまどい、お客さんに怒鳴どなられイヤになった」

 人手不足の現場では、実践主義がもてはやされ、職場内訓練(OJT; On the job training)という名の無茶(むちゃ)な「ぶっつけ本番」が横行しています。

 だから、「まだ教わっていない」「聞いていたことと違う」「こんな仕事だったなんて知らなかった」……。アルバイトを含む非正規雇用者について、6か月以内の離職率が55%というデータがあります。不満を募らせたバイトスタッフは、半年を待たずに離職しているのです。

 「ブラックバイト」が問題になった数年前とは明らかに違った課題が、ここに生じています。

◆人手不足で生まれる「辞められ店長」 深刻な人手不足

「人件費を抑えてほしい」「利益をもっと意識してほしい」

 社長や本社(本部)からのこうしたプレッシャーに、板ばさみとなった店長は、自らが働くことで、人員不足の穴を埋め、売り上げアップを図るしかありません。

 ある飲食店の男性店長に労働状況を聞いてみました。

 「毎朝9時に出勤し、仕事を終えて店を出るのは午後11時ごろ。週に2日休めることはほとんどなく、毎月の残業は190時間に上る」とのことです。この男性店長「まだ休めるだけマシですよ」と苦笑いします。

 ところが、現場を回すことに汲々(きゅうきゅう)としているこうした多忙な店長の手からは、こぼれるようにアルバイトがやめていっている現実もあります。

 それもそのはずで、店舗運営も職場マネジメントが手薄になっているのです。

 アルバイトのシフト管理はおろか、採用すらおぼつかない状況です。ここに「辞められ店長」の生まれる背景があります。

◆面接官の態度が怖かった

サービス業や接客業の中には、根拠のない自信をみなぎらせ、「俺についてこいよ」タイプの店長も少なくありません。

 こういう店長に限って、「丁寧に教えたつもりだったのに……」とか、「せっかく期待していたのに……」と言いながら、バイトにやめられてしまう事態に陥りがちです。

 「辞められ店長」にならないためには、二つのアプローチが考えられます。

【1】採用力を養う

 私たちがバイトスタッフを対象に行ったアンケート調査では、「面接を受ける際に不満に思ったことはありますか?」という質問に対し、2人に1人(50.7%)が「ある」と答えています。

 店長側は、「採用するかどうか」を見極めようという意識が強くあるため、応募者に対して「ここで働くメリット」「どんな仲間と働くことになるのか」「どのような経験が積めるのか」といった仕事の説明や動機付けが十分できていない可能性があります。

 面接を通して、「この職場で働きたい」という気持ちを高めてもらう必要があります。

【2】受け入れ力を磨く

 あるファミリーレストランでは、「ウェルカム・プログラム」というマニュアルを作り、出勤初日のバイトに店長が、会社の理念、職場の雰囲気、仕事の手順などを説明する時間を設けるようになりました。

 教育担当者をきちんと決め、バイトの不安を払拭するようにしました。これにより、1か月の離職率が半分に減ることにつながったそうです。

 たとえ、面接の段階で「ちょっとまだ迷っている」という応募者がいたとしても、受け入れ段階で、「ここで働く」というイメージを描いてもらえれば十分リカバリーが可能なのです。

◆バイトに辞められてはいけないワケ 深刻な人手不足

アルバイトの採用については、「やめたら、また新しい人を採用すればいい」と考えていた時代もありました。しかし、この超売り手市場で人手不足が深刻な状況にある中、経験を積んだアルバイトスタッフは生産性向上のカギを握っていることを見逃してはいけません。

 接客、レジ打ち、配膳、陳列といったバイトに任される業務の多くは、ベテランになればなるほど効率が良くなり、サービスの質がアップします。

 同じ業務を1年間続けてもらえれば、後輩の手本となり、指導役にもなるでしょう。数年たてば、店長の補佐役となって、店長不在時に店を任せることもできます。

 短期間にやめたバイトの代わりを補充するということを繰り返していては、店舗としての生産性は一向に上がりません。店長受難の時代にあって、「辞められ店長」の汚名を返上することこそ、人材の定着につながるのです。

企業の36%が「人手不足」 商機逃す 強まる警戒感

企業の36%が「人手不足」 商機逃す 強まる警戒感

フジサンケイビジネスアイが7月下旬から8月上旬にかけて主要企業121社を対象に実施したアンケートで、無回答を除くと36%の企業が人手不足を感じていることが分かった。労働市場の需給の逼迫(ひっぱく)は賃金上昇圧力となり景気拡大に寄与することが期待される一方で、商機を逃す要因にもなりかねず、警戒感を強める企業の姿が浮かびあがった。

 割合は、いずれも無回答を除いて算出。「全般的に不足」と回答した企業が4%、「一部で不足」が32%だった。「過不足はない」との回答が最も多く63%だが、「過剰」という回答は1%だけで、全体としては人手不足の傾向がうかがえる結果となった。

 人手不足の最大の要因は景気拡大を受けて企業活動が活発化していることだ。厚生労働省の担当者は「共働きの増加や定年後の再雇用などで労働力人口は増加傾向にあるが、それを上回るペースで仕事が増えている」と話す。6月の有効求人倍率は1.51倍と、高度経済成長直後の1974年2月以来の高水準となっており、アンケートでも幅広い業種で人手不足が広がっていることが分かった。

 各企業に人手不足が景気に与える影響を聞くと、64%の企業が「悪影響を与える」と回答した。「受注活動や生産活動の遅延」(建設)や「人件費上昇が収益を圧迫する」(素材)などが主な理由だ。一方で、「賃金上昇圧力の強まりは企業の生産性向上を促す」(保険)といった意見や、「賃金の引き上げによって消費が拡大する」(食品)などと前向きにとらえて「一部に好影響」とする回答も12%あった。「その他」として、悪影響と好影響の両方を指摘する企業も17%あった。

 対策について聞くと、採用活動を活発化させたり、外国人を積極採用するなど対策を進めている様子が浮かびあがったが、「ロボット・人工知能(AI)の活用による生産性向上」(機械)といった、省力化投資への取り組みを挙げる企業も目立った。今年4月にはコンビニエンスストア大手5社が2025年までに国内の全店舗にセルフレジを導入する計画を発表。大手スーパーでも導入の動きが広がるなど、省力化投資への取り組みは今後も加速する見通しだ。

 日銀は、企業業績が上向き、従業員への賃上げを実施すれば、個人消費が拡大し、物価が上昇するとのシナリオを描いている。だが、7月に出した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中で、企業による省力化投資の拡大が「賃金コストの上昇を吸収しようとしている」と分析。物価が上がりにくい要因となっている。こうした流れが過剰に進めば、景気に水を差しかねないとの指摘もある。

■アンケート回答企業

 IHI▽曙ブレーキ工業▽旭化成▽アサヒグループホールディングス▽味の素▽アステラス製薬▽イオン▽出光興産▽伊藤忠商事▽ANAホールディングス▽SMBC日興証券▽NEC▽NTT▽NTTドコモ▽MS&ADインシュアランスグループホールディングス▽大阪ガス▽オリックス▽花王▽鹿島▽川崎重工業▽関西電力▽キッコーマン▽キヤノン▽九州電力▽京セラ▽キリンホールディングス▽クボタ▽KDDI▽神戸製鋼所▽コスモエネルギーホールディングス▽コマツ▽サッポロホールディングス▽サントリーホールディングス▽JR西日本▽JR東日本▽JXTGホールディングス▽JFEホールディングス▽JTB▽Jパワー(電源開発)▽J.フロントリテイリング▽資生堂▽清水建設▽シャープ▽商船三井▽新日鉄住金▽スズキ▽住友化学▽住友商事▽住友生命保険▽セイコーエプソン▽西武ホールディングス▽積水ハウス▽セコム▽セブン&アイ・ホールディングス▽双日▽ソニー▽ソフトバンクグループ▽SOMPOホールディングス▽大成建設▽第一生命ホールディングス▽ダイキン工業▽大和証券グループ本社▽大和ハウス工業▽高島屋▽武田薬品工業▽中部電力▽T&Dホールディングス▽ディー・エヌ・エー(DeNA)▽DMG森精機▽帝人▽TDK▽東京海上ホールディングス▽東京ガス▽東芝▽東北電力▽東レ▽トヨタ自動車▽豊田通商▽日産自動車▽日本航空▽日本生命保険▽日本たばこ産業(JT)▽日本通運▽日本マクドナルドホールディングス▽日本郵船▽任天堂▽野村ホールディングス▽パソナグループ▽パナソニック▽日立製作所▽ファーストリテイリング▽富士通▽富士フイルムホールディングス▽ブリヂストン▽マツダ▽丸紅▽みずほフィナンシャルグループ▽三井住友トラスト・ホールディングス▽三井住友フィナンシャルグループ▽三井物産▽三井不動産▽三越伊勢丹ホールディングス▽三菱ケミカルホールディングス▽三菱地所▽三菱自動車▽三菱重工業▽三菱商事▽三菱電機▽三菱UFJフィナンシャル・グループ▽明治安田生命保険▽ヤクルト本社▽ヤマトホールディングス▽ヤマハ発動機▽ユニー・ファミリーマートホールディングス▽吉野家ホールディングス▽楽天▽LIXILグループ▽リクルートホールディングス▽りそなホールディングス▽ローソン▽ロート製薬 (五十音順)

深刻な人手不足で現場では過重労働が蔓延 「面接対応する人すらいない」「もう1か月、1日12時間労働」

深刻な人手不足で現場では過重労働が蔓延 「面接対応する人すらいない」「もう1か月、1日12時間労働」

最近はどの会社でも人手不足状態になっているが、ガールズちゃんねるには6月末、「人手不足な職場で働いている人集合!」というスレッドが立った。スレ主は接客業に従事する人物で、

「人手不足でシフト人数は常にギリギリ、欠勤者は必ず代理を立てなければ店が成り立たない、大雪でも這ってでも出勤しなきゃいけない環境で働いています」

と現状を嘆いた。

「飲食業はロボット化できないか ペッパーくんに手伝ってもらいたい」

スレッドでは、スレ主と同様の状況に身を置く人から悲痛な叫びが挙がる。

「人手不足で、もう1ヶ月以上、12時間勤務です。 もちろん、サービス残業」
「介護職は人手不足でヒーヒーです なんとかしてー」

業種は飲食や介護などが多い。介護職に従事する人は、ケガで指を4針縫った状態であるにもかかわらず、手袋をして入浴介助させられたという。飲食業に従事する人は、シフトが回らない時は店を閉めるほど人が足りない現状にあり、客離れを心配し、

「接客業、飲食業はロボット化できないのかな ペッパーくんに手伝ってもらえたら嬉しい」

と心境を吐露した。

慢性的に人不足が続いている会社では、経験者が欲しくても応募がない、たとえ新しく人を雇っても教育ができず、すぐに辞めてしまうという悪循環が発生していることがある。以下のような負のループを書く人もいた。

「人手が足りない →募集、採用 →忙しいのでなかなか教えられない →忙しい時に怒鳴られたりクレーム受けたりする →先輩もフォローする余裕なし→ 退職」

労働人口は減り続けるばかり、今までのやり方では採用できない

また、「本当に人手不足で、雇う金はあるが研修はおろか、募集かけて対応及び面接する時間さえない……」など、もはや採用を担当する人員すらいない状況を嘆く人もいた。

日銀が3日に発表した短観では、大企業、中小企業共に人員不足感の強まりが示され、いまや全国的な問題だ。

特に中小企業にとって事態は深刻だ。日本商工会議所が7月3日に発表した調査結果では、約6割の中小企業が「人員が不足している」と回答。業種別では「宿泊・飲食業」が圧倒的に多い。即戦力となりえる中堅層を求めるが、募集をかけても応募がないなどの悩みを抱え、4社に1社が「人員不足の影響が出ている」と危機感を抱いている。これでは結局現在の人員でなんとか回すしかないが、これでは限界が来る。

働き手そのものも減っている。総務省が5日発表した資料では、今年1月1日現在の日本人の人口が前年比で約30万8000人減少。8年連続で減っている。企業は今までのやり方ではもう人を採用することが難しくなるだろう。

広がる人手不足が企業活動圧迫、潜在成長率ゼロ試算も

広がる人手不足が企業活動圧迫、潜在成長率ゼロ試算も

人手不足で生産やサービスを制限するケースが運輸業だけでなく、製造業も含めて広がりを見せてきた。このまま労働力不足が継続すれば、2030年には日本の潜在成長率はゼロ%ないしマイナスに落ち込むとの試算もある。

一方、人口減少は市場規模の縮小を招き、製造業を中心に雇用の固定化は「人余り」につながるとの予測もある。将来の日本経済は、労働需給のミスマッチがさらに拡大しそうだ。

深刻化する投入労働力の減少

国立社会保障・人口問題研究所によると、15歳から64歳までの労働力人口は、2017年の7578万人から27年には7071万人に減少。さらに30年には6875万人まで落ち込む。

日本総研・主席研究員の牧田健氏は、現状の生産性を前提とすると、労働投入量の減少に伴い、2030年代終わりには潜在成長率が現在の0.8%程度からゼロ%に低下。2040年代に入ると、マイナスに転落すると予測する。

ある経済官庁の幹部は、人手不足が特定の業種から幅広い分野に広がるようなら、生産や成長率に悪影響が出る可能性があり、そうした点を注視していくとの見解を示した。

実際、6月ロイター企業調査では、あらゆる業種で事業制約への懸念がうかがえる結果となった。人手不足により今後3年間、事業を制限せざるを得なくなるとみている企業は全体の17%に達した。

自動車メーカーでは「製造現場で派遣の期間工確保に困窮している」状況で、「現場技術者の不足による受注活動の制約を懸念している」(金属製品)、「人手不足により納期遅延となり、受注を失した」(機械)との声もあった。 

AI普及に技術者不足のハードル

政府は、女性や高齢者の労働市場への参加を促進し、労働力不足に対応しようとしているが、日本総研の牧田氏は、その程度のプラス要因では急速な労働力人口の減少を補えないとみている。

民間企業では、製品やサービスの高度化と合わせ、人手不足への対応策としてAI(人口知能)やIoT(モノのインターネット化)の導入を始めているところもある。

しかし、「AIやIT(情報技術)、IoTを扱う人材が不足している」(輸送用機器)といった声が聞かれる(6月ロイター企業調査)。

政府は高度外国人材の呼び込みや、中堅技術者の学び直し、小学校でのプロミング授業の導入などを打ち出しているが、効果を期待できるのは20年代に入ってからとなりそうだ。

内需縮小にらみ、雇用固定化には二の足

一方、足元における人手不足と全く対照的な「人員過剰」を心配する声も、産業界では出ている。

ある与党議員は、製造業経営者を呼んだ勉強会で、2020年以降に予想される国内市場の急速な縮小を展望すると、「短期的な人手不足で雇用を増やすと、5年後以降に大幅な人員余剰になる可能性があり、それを懸念する声が多かった」ことを明らかにした。

今年4月に発表された人口推計では、総人口が現在の1億2681万人から2020年までに180万人減少、2030年までには1千万人弱減少する見通し。

ロイター企業調査でも「日本では生産量が低減するため、現在の人手不足は大きな支障ではない」(輸送用機器)との声や、「日本人の人口減少に対し、外国人労働力の利用を真剣に考えるべきだが、内需縮小の中で将来的にどれぐらいの補充が必要になるか判断が難しい」(化学)と悩む声が聞かれた。

ただ、冷静に見守る考えを示す政策当局者もいる。日銀の岩田規久男副総裁は22日、青森市で講演し、「むしろ省人化投資などが次第に増加することで、労働生産性を向上させ、わが国経済の一段の成長を促していく要因になる」と語った。

他方、今後の日本経済でウエートが高まるのは、高齢化に伴って介護・医療、サービス分野だとの見通しも根強くある。こうした分野では人手不足が恒常化する可能性がある一方、製造業の現場では自動化の推進で人員余剰を招くリスクもある。

つまり、産業分野によって「不足」と「余剰」が入り混じるまだら模様になっている可能性があるということだ。

第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は「AIやIoT、ロボット化で短期的に対応しても、長期的にはやはり人口問題への抜本対策を講じる以外に解決の道はない」と指摘している。

このままでは「人手不足倒産」という悪夢が現実になる 「バブル期超え」を喜んでいる場合か

このままでは「人手不足倒産」という悪夢が現実になる 「バブル期超え」を喜んでいる場合か

小売・医療介護にも波及

 遂に「人手不足」がバブル期を上回る水準にまで達してきた。厚生労働省が5月30日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.48倍と、前月に比べて0.03ポイント上昇した。バブル期のピークだった1990年7月(1.46倍)を上回り、1974年2月に付けた1.53倍以来、43年2カ月ぶりの高水準を記録した。

 人手不足は東京などに限らず全国的な傾向。13カ月連続で全都道府県で有効求人倍率が1倍を上回った。運輸業や建築業など慢性的な人手不足業種だけでなく、製造業や小売業、医療介護など幅広い分野で求人が増えている。

 職業別に有効求人倍率をみると、専門的・技術的職業の中で「建築・土木・測量技術者」が4.41倍と高いほか、「建設・採掘の職業」では「建設躯体工事」が8.35倍、「建設」が3.72倍、「土木」が3.10倍などとなっており、工事現場での人手不足が引き続き深刻であることを示している。このほかの業種でも、「サービス」が2.93倍、「保安」が6.34倍、「自動車運転」が2.53倍などとなっている。

 同日、総務省が発表した4月の労働力調査でも、完全失業率が3カ月連続で2.8%となるなど、失業率でみてもバブル期並みの低さを維持している。

 労働力調査によると、就業者数は6500万人と1年前に比べて80万人増加、企業に雇われている雇用者数も5757万人と、前年同月に比べて57万人増えた。前年同月比での増加は、就業者数、雇用者数とも、安倍晋三内閣発足直後の2013年1月から52カ月連続。アベノミクスの開始以来、雇用情勢の好転が続いていることになる。

 有効求人倍率がバブル期越えとなった背景には、当然のことながら働き手の数自体が減少傾向にあることがある。求人に比べて仕事を探している求職者の数がなかなか増えないわけだ。もっとも、就業者数全体の数は2010年5月の6281万人を底に増加傾向が続いており、ピークだった1998年1月の6560万人に近づいている。

 定年の延長など働く高齢者が増えたことや、女性の参画が活発になったことが背景にある。安倍内閣も「女性活躍の促進」や「一億総活躍社会」といったスローガンを掲げ、働く人材の確保に力を入れていることが大きい。

 今後も人手不足は一段と鮮明になっていく可能性が大きい。東京商工リサーチによると、2016年度(2016年4月〜2017年3月)の「人手不足」関連倒産は310件(前年度321件)だった。代表者の死亡などによる「後継者難」型が268件(前年度287件)と大半を占めたが、「求人難」による倒産も24件と前年度の19件から増加した。

 さらに、人件費高騰による負担増をいっかけに資金繰りが悪化して倒産する「人件費高騰」関連倒産も、18件(前年度25件)にのぼった。

 まだ、人手不足倒産が急増しているわけではないが、東京商工リサーチでも「景気の緩やかな回復の動きに合わせて人手不足感が高まっているなかで『求人難』型の推移が注目される」としている。

結局、「働き方改革」が不可欠

 人手不足の中でいかに人材を確保するかが、今後、企業経営者にとって大きな課題になることは間違いない。すでに正規雇用化によって人材を確保しようとする動きは広がっている模様で、統計にもはっきり現れている。4月の労働力調査で「正規の職員・従業員数」は3400万人で、前年同月比14万人、率にして0.4%増加した。正規雇用の伸びは29カ月連続である。

 今後、人口の減少が鮮明になってくる中で、どうやって労働力を確保していくのだろうか。高齢者や女性の活用はかなり進んでいる。非正規雇用の女性の正規化などは進むとみられるが、雇用者数を生み出す源泉にどこまでなるかは微妙だ。

 そんな中で、期待されるのが、求人と求職のミスマッチの解消。例えば4月の調査で「一般事務職」の求人数は14万9971件に対して、求職者は47万9035件に達する。有効求人倍率は0.31倍だ。「事務的職業」全体でみても、有効求人倍率は0.4倍にとどまる。つまり、事務職に就きたいという希望者が多い一方で、企業の中では事務職の仕事自体がどんどん効率化され消えていっているという現実がある。

 こうした事務職希望の人材に、慢性的な人手不足に陥っている販売職やサービス職に就いてもらうことができれば、ミスマッチが解消されるわけだ。販売やサービスよりも事務を好む理由は、労働時間や賃金などの待遇が大きいと思われる。

 事務職は定時に勤務を終えられるが、顧客を相手にする職種では勤務時間が不規則になりがちだという面もあるだろう。また、事務職の方が安定的に長期間にわたって勤務できるというイメージもある。つまり、このミスマッチ解消には、政府が今、旗を振っている長時間労働の是正など「働き方改革」が不可欠ということである。

 小売りや飲食・宿泊といったサービス産業では、長時間労働の割に給与が低いという問題もある。長年続いたデフレ経済に伴う価格破壊で、十分な利益を上げられる価格設定ができていないケースが少なくない。インバウンド消費の増加もあって良い物にはきちんとした価格を支払うムードができつつある。

 最終販売価格を引き上げ、それで従業員に適正な給与を支払うという「経済の好循環」が生まれれば、サービス産業にも人がシフトしていく可能性は大きい。いずれにせよ、人手不足は改革のチャンス。従来通りのやり方では、早晩、人手不足倒産に直面することになる。
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