ヒトとネギに泣く? 鳥貴族280円→298円に値上げの「壁」
「298円がギリギリの決断だったはず」と飲食業界関係者は言う。全品280円(税別)均一の低価格路線で急成長した鳥貴族が、10月から298円(同)に値上げをすると発表した。
サラリーマンの財布に優しい2時間飲み、食べ放題プラン「28とりパーティー」も、1人2800円が2980円に。庶民にとっては痛い値上げだろうが、これまで28年以上、280円均一を維持してきた同社にとっても苦渋の決断だったろうことは分かる。
2012年7月期に108億円だった同社の売上高は、昨年は245億円。純利益も6300万円↓9億8100万円と右肩上がり。昨年8月に全国495店だった出店数も、今年7月には567店にまで増えている。
「今や海外出店まで視野に入っています。大倉忠司社長が掲げる2000店、世界一の焼き鳥屋を目標に攻勢を続けていますが、値上げが、飛ぶ鳥を落として食わんばかりの勢いに水を差すことは間違いない」(前出の飲食業界関係者)
それでも値上げをするのは、“人件費など店舗運営にかかるコストの上昇が続いているほか、天候不順による国産食材の価格高騰の影響があり、もはや内部努力ではコスト上昇分を吸収しつつ現行価格を維持することは難しいと判断したから”と同社は説明している。
実際、同社では6月、17年7月期の売上高を従来予想の307億円(前期比25%増)↓291億円(同19%増)、純利益も11億6400万円(同19%増)↓8億5100万円(同13%減)に下方修正。ネギなどの野菜価格の高騰が想定外に長引いたことも響いたという。
「材料の高騰リスクは飲食チェーンにとって付き物ですが、それより問題は人件費。東京五輪に向けた人手不足も見越した値上げでしょうが、想定外に人件費が上がる恐れもあります。同社はタッチパネルによる注文など省人化も進めていますが、6%の値上げだけで吸収できるかどうか。それでも298円に抑えたのは『300円の壁』も意識したからでしょう。かつて200円台で争っていた牛丼チェーンが、300円台に値上げした途端に、客足が大幅に遠のいた。低価格路線の飲食店にとって、越え難い壁なんです」(経済ジャーナリスト・岩波拓哉氏)
まさにギリギリの決断だったということか。